2023 Fiscal Year Research-status Report
微小領域・同位体比分析による金・白金鉱床の成因解明
Project/Area Number |
22K03736
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森下 祐一 静岡大学, 防災総合センター, 客員教授 (90358185)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金 / 白金族 / 熱水性鉱床 / 海底熱水鉱床 / 鉱床成因 / SIMS / 微小領域分析 / 安定同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
産業で重要な役割を担う金 (Au) と、白金 (Pt) などの白金族元素 (PGE) は、自然界においてミクロなスケールで偏在する希少元素である。本研究では、金鉱石や白金族鉱石などにおける“見えないAu”や“見えないPt”の存在形態を、二次イオン質量分析法 (SIMS) を用いてナノメータースケールの高空間分解能で分析して解明する。AuやPtの存在形態は元素の沈殿メカニズムに依存していると考えられるため、SIMS定量分析に加えて安定同位体比質量分析法(IRMS)も活用してAu, Pt 鉱床の生成環境を明らかにする。 米国アラスカ州のポゴ金鉱床ではカルサイト等の炭酸塩鉱物が鉱床生成と密接に関連している。炭酸塩鉱物は酸素同位体比に加えて炭素同位体比も同時に得られるため,同位体比分析により得られる炭素・酸素同位体比の組合せが鉱床生成環境の重要な指標となることが多い。この研究の基礎となる同位体比の温度依存性を物理的に示す酸素同位体比分別係数を1℃から150℃の間で実験的に求めた。この研究成果は以下の国際誌に投稿して公表された。Morishita, Y. (2023) Hydrothermal calcite precipitation in veins: Inspired by experiments for oxygen isotope fractionation between CO2 and calcite from 1 °C to 150 °C, Applied Sciences, 13, 5610; https://doi.org/10.3390/app13095610. このほか、海底熱水鉱床のSIMS微小領域分析に基づく研究と断層岩の同位体的研究について、まだ研究実績は得られていないが、実施した研究の進捗状況を7。現在までの進捗状況に記す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素同位体比に関する知見は本研究計画の根幹を成すものだが、二酸化炭素と方解石の酸素同位体分別係数を実験的に求め、フィールドに適用する研究を論文として公表した。この知見に基づき、次年度以降に行う酸素同位体比を用いた研究を行う。 伊豆小笠原弧の東青ヶ島カルデラで発見された海底熱水鉱床には、native goldが観察されるなど極めて金品位が高い特徴がある。この海底熱水鉱床から採取した黄鉄鉱について、Morishita et al. (2018) のAu/As定量分析法を用いて金とヒ素のSIMS微小領域定量分析を行ったところ、金は金鉱物としてだけではなくinvisible goldとして黄鉄鉱中に高濃度で存在することを明らかにした。 また、研究計画調書に記載していない内容であるが、本研究計画の研究目的に合致する研究の予察として、中央構造線の断層岩を対象として炭酸塩鉱物の炭素酸素同位体比をとりまとめている。複雑な炭酸塩鉱物を同定するために、X線データに加えてICP-MS全岩分析値を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した東青ヶ島カルデラ海底熱水鉱床のSIMS分析に全岩分析値やEPMA分析値を加えて検討し、生成環境と成因の解明に関する研究を行う。 海底熱水鉱床の黄鉄鉱を対象としたSIMS深さ方向微小領域分析はまだ世界で行われていない分析であり、精度の高い分析に基づき、研究を進展させて成果を論文として公表する予定である。 ポゴ金鉱床の鉱床成因については、炭酸塩鉱物(シデライト、アンケライト、カルサイト)が鉱床生成と密接に関連している事が炭素酸素安定同位体比から明らかになったため、ポゴ鉱床の熱水の進化を論文として公表する予定である。 中央構造線には断層に沿って断層岩が存在することが多い。安康露頭から採集した炭酸塩鉱物の研究を進めて成果を論文として公表する予定である。 また、伊豆半島南部の鉱床や北海道の上国鉱床から得た炭酸塩鉱物の炭素・酸素同位体比測定に基づき、これら熱水鉱床の熱水の起源や進化について明らかにしていく予定である。一方、中央構造線断層や南アフリカ共和国のブッシュフェルト複合岩体のPGE鉱床への熱水の影響に関しても検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
これまで海外でのフィールドワークを行わずに研究を進めたために、使用額が計画より減少し、次年度使用額が生じた。 次年度は、国内外での研究成果の学会発表を行うほか、複数の論文を国際誌に公表する予定である。論文投稿料やオープンアクセス料等が比較的高額になることが予想されるが、研究成果の公表に予算を使用する予定である。また、海外でのフィールドワークの可能性についても検討していきたい。
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