2022 Fiscal Year Research-status Report
考古遺跡出土貝類の成長線解析と酸素同位体比分析による完新世琵琶湖水温の定量的復元
Project/Area Number |
22K03738
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
堂満 華子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (70397206)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 完新世 / 琵琶湖 / 貝殻 / 成長線 / 酸素同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
近い将来起こる気温上昇が人々の生活の場である陸域環境に及ぼす影響を具体的に評価するうえで,現在よりも年平均気温が1-2℃ほど高かったとされる完新世の気候最適期における陸域の環境変動を定量的かつ高解像度に復元することは重要である.本研究では,研究代表者と研究協力者からなる研究チームによって開発された琵琶湖産二枚貝セタシジミの殻の化学組成を用いた湖沼古水温換算式を環びわ湖域の考古遺跡から出土する貝類に適用し,完新世のさまざまな時間面における琵琶湖表層水温の季節変動を定量的に復元することにより,当時の内陸部の気温変動の推定を試みる. このため2022年度は,1)貝殻の成長線の観察・解析方法の検討,2)貝殻の成長線解析や環びわ湖域の考古遺跡に関する文献調査をおこなった.まず1)について,殻の成長線を観察・解析し,その後に殻から微量粉末試料を切削するためには,殻をあらかじめ樹脂に包埋する必要があるため,樹脂の硬化実験をおこなった.その結果,P-レジン(不飽和ポリエステル樹脂)を選定し,樹脂の主剤に対する硬化剤と促進剤の割合,樹脂の完全硬化に要する時間を明らかにした.また,画像処理ソフトウェア(ImageJやPhotoshop等)を用いた成長線解析の方法について試行した.次に2)について,Mutvei溶液を用いた処理法や蛍光顕微鏡を用いた観察方法に関する知見を得た.そのうえで,Mutvei法の実験に着手した.また,琵琶湖湖底の縄文貝塚に関する文献資料の収集・整理を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環びわ湖域の考古遺跡に関する文献資料の収集・整理作業に当たる補助員として適任者が見つからなかったため,当初の予想よりも時間を要した.現在も進めているところであり,全体の計画には大きく影響しないと見込んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って,2023年度は環びわ湖域の考古遺跡に関する各種報告書・論文等の文献や博物館収蔵試料について地球科学的視点から調査し,本研究課題に適した資試料の収集・整理・選定を実施する予定である.そのうえで2024年度にかけて,遺跡ならびに出土する貝殻等の試料について年代が未確定のものを対象に放射性炭素年代測定を実施し,研究目的に最適な貝類遺体の選定をおこなう予定である.また,セタシジミ飼育標識個体の成長稿に記録される環境情報とその解像度の解析を実施する予定である.最終年度となる2025年度までには,貝塚から産出するセタシジミを主とする貝殻の試料採取や保存状態等の検討を進め,成長線解析と安定酸素炭素同位体比分析にもとづく琵琶湖古水温の年変動・季節変動の定量的復元を試みる予定である.
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Causes of Carryover |
作業補助に当たる適任者が見つからなかったため,主に,その雇用費としての残金が生じた.残額は翌年度分とあわせて,引き続き研究遂行上必要と考えられるものに対して適切に使用する予定である.
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