2023 Fiscal Year Research-status Report
海洋観測に基づく温暖化時の強大台風による漂流物被害予測
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22K03743
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
村上 智一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80420371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 信也 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 契約研究員 (40360367)
小笠原 敏記 岩手大学, 理工学部, 教授 (60374865)
川崎 浩司 名城大学, 理工学部, 特任教授 (20304024)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 台風 / 強風下海水流動 / 波浪 / 現地観測 / 数値シミュレーション / 水槽実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は,温暖化時の強大台風に匹敵する台風下の流速・波浪などの海洋実測データを取得し,それを基にした高潮・高波・浸水の数値予測を行うことである. 当該年度では ,WavesADCP,水温計,風向風速計を西表島網取湾に設置し,強大台風下の海洋観測データおよび気象平常時の海洋観測データの取得を試みた. しかしながら,WavesADCPの故障のため,流速および波浪データの取得には至らなかった.その一方で,西表島に接近した台風2302号,2306号および2311号の風速,風向,水温のデータの取得には成功した.特に最大瞬間風速29.6 m/sを記録した台風2306号接近時には,水温の鉛直分布も計測できており,その特性が明らかとなった. また,過去に西表島の網取湾に来襲した台風1515号の流速鉛直分布データを対象に3次元流動解析を実施した.観測結果の流速鉛直分布の再現性の向上を目的として,鉛直方向の粘性係数と海域の底面粗度係数を対象とした感度分析を実施した.その結果,鉛直方向の粘性係数を小さくすることで表層から底層へ伝播する流れが抑制された.また,サンゴ礁が発達した海域であるため,底面粗度係数を通常の津波・高潮解析で使用される値より大きくすることで観測結果の再現性が向上した.解析結果の流動分布より,台風1515号の来襲時に網取湾では表層と底層で異なる流動場が形成されていることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究において基幹となるのは,WavesADCPによる観測である.これを設置観測から回収時,タッチセンサーが反応せず,通信が行えなかった.分解検査を実施し,トランスデューサ側に浸水が見られた.Oリング面は,トランスデューサ側・ハウジング側共にきれいな状態であり,漏水箇所ではないと判断された.メーカーにおいて,ヘリウムリークテストを行った結果,スラント(1~4番)ビームからリークが検出された.これらのビームを取り外してOリング清掃を行い,再度テストを行ったが変わらずリークが検知された.追加の検査においてトランスデューサのウレタンを精密検査したところ,ウレタン縁に隙間が出来ており,ここがリーク経路であると断定した.よって,トランスデューサ側の部品は全て交換が必要であると判断された. このため,該当年度は,台風下の流速・波浪のデータ取得が行えず,研究の進捗に遅れが生じた. その一方で,水温,風速等のデータは,計画通りに取得できており,これと過去に観測した台風データを用いて,数値シミュレーションによる感度実験などを実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
網取湾が位置する沖縄県西表島は,地理的条件から強大な台風の来襲確率が高く実際に1951~2019年の台風来襲個数の年平均値は4.1個,これまでの西表島における最大瞬間風速の最大値は,台風0613号来襲時の69.9 m/sである.このことから,故障したWavesADCPを修理し,台風下の海洋観測を継続し,温暖化時に三大湾に来襲すると予測されている強大台風に匹敵する台風下のさらなる海洋観測データ取得を目指す. また,強風下の乱流モデルや海面抵抗係数のバルク式に得られた温暖化時の強大台風に匹敵する台風下の流速・波浪・風速・海底地形データを入力し,それらの妥当性を検証する.そして,観測データを用いた逆解析手法や感度実験によって,温暖化時の強大台風の暴風に適用できる乱流モデル・バルク式の新たな係数などを提案する. 数値予測では,海洋流動モデルFVCOMおよび高潮浸水解析用に改良した津波シミュレータT-STOCに検討・改良した乱流モデル・バルク式に置き換え,温暖化時の強大台風による高潮・高波・浸水を再評価する.
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Causes of Carryover |
WavesADCPの故障のため. 次年度以降に,この遅れを取り戻すために,調査・観測の回数を増やす. 残額は,これらの経費に充てる.
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Research Products
(2 results)