2022 Fiscal Year Research-status Report
古湖沼学的アプローチによる玄武岩質火山噴火に伴う一次生産応答の時空間解析
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22K03746
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Research Institution | Mount Fuji Research Institute, Yamanashi Prefectural Government |
Principal Investigator |
山本 真也 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (50526754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀谷 伸子 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (50848562)
香月 興太 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (20423270)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 湖沼 / 一次生産 / 珪藻 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、富士山北麓、河口湖の西湖盆において長さ約3.4 mの堆積物コア(KG22-01)を新たに採取し、本コア底部付近(深度3.27-3.19 m)に含まれていた層厚8 cmのスコリア層の上下層を対象に分析を行なった。堆積物試料は、有機溶媒で抽出しシリカゲルカラムで分画した各成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で分析した。分析の結果、珪藻由来のバイオマーカーがスコリアの堆積直後に減少し、その後スコリア層の上位11 cm付近にかけ再度増加する傾向が見られた。同様の傾向は、緑藻類のバイオマーカーでも見られ、火山噴出物の流入に伴う透明度の低下や有害物質の溶出により一時的(50-100年程度)に生物生産が阻害された可能性が示唆された。一方、スコリア堆積後の緑藻バイオマーカーの長期的な変動傾向は、陸上植物バイオマーカーの変動とよく一致しており、河口湖では集水域からの栄養塩流入が生産性の変化に重要な役割を果たしているものと考えられた。また、同コアの珪藻化石の解析の結果、50属152種の珪藻が産出し、全体を通してAulacoseira longispinaやCyclostephanos dubiusといった広適応性種浮遊性種が優勢であることが明らかとなった。また、スコリア層下位層では好アルカリ性浮遊性種Lindavia radiosaが多産していたが、スコリア層の上位層ではほとんど出現せず、より低いpHに適応する種が多産することから、噴火に伴い湖沼内のpHが変化した可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料採取から分析まで計画通りに研究が進み、火山噴火後の環境変化を示すデータが得られたことから、概ね順調との判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
生産性の指標となる炭素安定同位体比の解析を行い、スコリア堆積前後での湖沼生産性の変化を明らかにする。また、集水域からの陸起源物質の影響を見積もるために、堆積物中の炭素/窒素比の測定を進める。更に、噴火の規模の違いによる環境への影響を明らかにするため、河口湖に堆積したその他のスコリア層についても上下層を対象に分析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、新規に取得したコアのバイオマーカー、珪藻分析を優先的に行なったため、テフラ層の化学分析への着手が年度後半となり、当初テフラ分析用に確保していた助成金に余剰が生じた。次年度は、今年度繰り越した分析を含め実施予定である。
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