2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical composition of the Earth's inner core from first-principles calculations and machine learning
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22K03754
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五味 斎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10876171)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / KKR-CPA / 機械学習 / 内核 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球の内核は、鉄・ニッケルに加えて軽元素(水素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄)の合金であると考えられている。このような多成分系合金では、考えられる組成の組み合わせが膨大になる。本計画では、多成分系の第一原理計算に適したKKR-CPA法と機械学習の組み合わせを用いて地球の内核の熱伝導度、および密度とバルク音速の研究を行う。 まず、内核圧力において六方最密充填構造を持つ6成分系までの鉄合金の不純物電気抵抗率の計算を行った。得られた結果に対して機械学習を用いて解析したところ、合金組成によらず抵抗率の飽和現象に従う事が明らかになった。この電気抵抗率に対してヴィーデマンフランツの法則を用いて内核の熱伝導度を推定した。その結果、内核は熱対流できないほど熱伝導度が高い事が明らかになった。 次に、六方最密充填構造を持つ5成分系までの鉄合金の状態方程式の計算を行った。得られた密度とバルク音速を地震波観測と比較したところ、内核中心と最上部を同時に説明できる化学組成が存在しないことが分かった。これは、内核の内部に化学組成の勾配が存在することを意味する。もしも内核が活発に対流しているなら、内核の化学組成は均一になるはずである。したがって、状態方程式の結果は、内核が組成勾配の獲得以来成層していることを示唆する。 地球の内核には、地震波速度の異方性や東西半球の非対称など特徴的な地震波観測が数多く報告されている。これらの特徴的な構造の原因は、内核の対流運動に起因すると考えられてきた。しかしながら、本研究の熱伝導度と状態方程式の結果から、内核は長期間にわたって対流していないことが明らかになった。地球内核は、10億年程度の期間をかけて成長してきたと考えられる。このため、内核はタイムカプセルであり、内核の特徴的な地震波観測は地球全体の歴史的イベントを記録しているかもしれない。
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