2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深畑 幸俊 京都大学, 防災研究所, 教授 (10313206)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スパースモデリング / 歪み速度場 / 活断層 / GNSSデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島などの変動帯では、活発な地殻の変形が生じている。地殻の変形は、原則として空間的に連続である一方、活断層周辺等に局在するという性質も併せ持つ。これまでGNSSデータから地殻の変形を推定する多くの研究がなされてきたが、平滑性など変形の連続性を強く仮定するか、或いはあらかじめ設定したブロック境界に変形を押し付ける方法が一般的であった。本研究では、この問題に新たにスパースモデリングを導入することにより、活断層等に基づくブロック境界をあらかじめ仮定することなく、地殻変形場の連続性と局在性を同時に表現可能な推定手法の開発を目指している。評価関数は,残差二乗和,スパース条件を表すL1ノルム,平滑化条件を表すL2ノルムの和として表され,初項に対する第2項および第3項の重みが超パラメタとなっている. まずは簡単のため,1次元で定式化を行い,横ずれ断層での定常滑りに伴う変形に対して数値実験を行い,提案手法の妥当性を検証した. ここで,ABICのような簡便な評価法がないため,各条件の重みは1個抜き交差検証法を用いて決めたが,Sato et al. (2022 GJI)で示したように,評価関数のglobal minimumが必ずしも最適解を与えるとは限らないという問題がある.そこで,周辺の値も含めた平均値を計算し,その平均値が最も小さくなる解を最適解として選ぶという工夫を行った.その条件下で,有馬高槻断層帯周辺のGNSS観測データに提案手法を適用したところ,断層帯近傍で L2 正則化と比べて20ー30%ほど大きな歪み速度の局在が推定された.断層の固着深度も見積もったところ,L2正則化では17 kmのところ,本手法では11 kmとなった.この地域の地震分布の下限(D90)が12 - 14 kmなので,それとより整合な結果が得られることとなった.本研究成果は近くEPS誌に投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだ1次元に対してではあるが,数値実験に加えて実データ解析でpositiveな結果が得られ,論文の投稿まであと一歩のところまで辿り着いた.歪み速度場推定におけるスパースモデリングの適用は恐らく世界初の試みであり,1次元とはいえ重要な成果が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2次元の場合に,手法を拡張する.1次元の場合の論文執筆と平行して,これまでも2次元の場合の定式化と予備的な計算を進めているが,2次元では,変位が2成分である一方歪みは3成分となること,計算量が多いため1個抜き交差検証法で超パラメタを定めることが困難,などの難しさがあることが分かった.どこにそれらの問題の根幹があるのかを調べて,突破口を探っていく.
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Causes of Carryover |
高速計算機の購入のために初年度に大きな額を計上したが,まずは1次元の定式化と計算を行った.1次元の場合には,2次元の場合と異なる計算量が少なくてすむ.計算機は年を追う毎に性能が上がるため,2次元の計算が本格化する令和6年度に購入予定とすることとした.また,コロナ禍のため初年度に旅費を使用しなかったことも,次年度使用額が膨らんだ要因となっている.
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