2022 Fiscal Year Research-status Report
降灰量分布を決定する気象学的および火山学的素過程に関する研究
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22K03760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
眞木 雅之 京都大学, 防災研究所, 特任教授 (10360364)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大規模火山噴火 / 降灰量分布 / リモートセンシング / 火山防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模火山噴火に伴う降灰の分布を決定する要因を明らかにするために次の3つの課題を挙げて研究をおこなっている.課題1:降灰量分布の統計解析,課題2:火山学的素過程と気象学的素過程の定量化,課題3:解析結果のデータベース化である. 2022年度は,2018年から2019年に発生した桜島火山の噴火事例について,国土交通省垂水Xバンドレーダデータなどを収集し,噴火事例毎の降灰量分布を求め,分布パターンの分類とその要因について考察した.事例解析の結果をデータベース化するためのwebサイト(http://vash.jp)を開設した. 2022年度の具体的な研究成果は,個々の噴火事例の降灰量分布は大きく4つの分布パターンに分類できることがわかったことである.便宜上,パターンA,B,C,Dと呼ぶことにする.パターンA:最も多く観測されるパターンで,降灰量は火口付近で最も多く風下に行くに従って減少していく.減少の仕方は一般風の強さによる.移流拡散とサイズソーティングが主たる要因である.このメカニズムは他のパターンにも共通する素過程であることからパターン1を基本タイプの降灰量分布と呼ぶ.パターンB:降灰量は火口から離れたところで多くなる.ホットスポットタイプと呼ぶ.ホットスポットの成因は細かい粒子同士の凝集によるものと考えられる.パターンC:火口から風下のかなりな距離までレーダ反射強度の強い領域が帯状に伸びる.このパターンの例は多くない.成因については良くわかっていないが,噴火とともに火口から大気中に火口から放出された大量の水が原因している可能性がある.パターンD:降雨中に噴火があったときに見られるパターンで,広範囲に広がる降水エコーの中に強い帯状に伸びる噴煙エコーが認められた.泥雨タイプと呼ぶことにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の1年目の目標として,必要なデータを収集すること,収集したデータの解析方法を確立すること,解析結果を公開するwebサイトを準備することを挙げた.これらの目標はすべて達成されており,本課題はおおむね順調に進展している.なお,研究発表は口頭(国内)3件,査読論文(英語)1編である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,過去の噴火事例データを収集する.最終的には噴煙高度が1000m以上の噴火を対象に約7000の噴火事例の登録を目指す.その中から顕著な事例を選択し降灰分布を決定する気象学的および火山学的素過程を明らかにして行く(課題1).初年度は降灰分布を決定する気象学的素過程として,移流拡散過程加えて凝集過程が重要であることがわかったので,今後は凝集過程の定量化に焦点を当て研究を進める.火山学的素過程に関しては,防災研究所桜火山観測センターに噴火前の山体の膨張やひずみデータが蓄積されており,抽出された顕著な噴火事例について降灰量分布との関連を調べて行く(課題2).火山の噴火研究および火山防災の資料として,引き続き,事例解析の結果をweb上で公開する(課題3).
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Research Products
(5 results)