2022 Fiscal Year Research-status Report
海域観測データによる南海トラフ地震発生帯モニタリングの高度化
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22K03766
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 揚二朗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 副主任研究員 (10540859)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 地震活動 / スロー地震 / 海底地震観測 / DONET |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年までにDONET観測網で検知された地震の読み取りデータを活用し、人工地震データと統合した地震波トモグラフィ解析を行うことで、高精度な震源決定に必要となる3次元地震波速度構造モデルを構築した。また、その結果として再決定された震源位置情報に基づき、地震活動について評価した。南海トラフの海域では、プレート境界における地震活動が低調で、沈み込むプレート内地震活動が卓越しているとこれまで考えられてきたが、本解析によると、プレート境界付近においても、地震活動のクラスターが複数存在することが明らかになった。さらに、そのうちの一部では、浅部ゆっくり滑りが発生したタイミングにおいて群発的な活動を示していた。これらの結果について、査読付き国際誌にて発表した。また、活動の時空間変化をより長い時間窓で検証するために、現在、2019年以降の地震カタログの拡充を進めている。 本研究のもう一つのターゲットである浅部超低周波地震についても、カタログ作成も進めている。特に今年度は、2022年1月から3月、および2023年3月における活動について、震源とメカニズム解の推定を実施した。前者については2022年日本地震学会秋季大会にて報告している。また、両方の活動について、気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」や地震調査委員会へ資料として提出した。さらに、本研究専用に用いることのできるワークステーションを購入・整備し、その環境において、2018年3月から6月にかけて発生したと考えられる長期ゆっくり滑り活動期間における浅部超低周波地震活動の震源解析を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の計画の大半は、通常地震および浅部超低周波地震カタログの整備であった。通常地震については、データが未整備である2019年4月以降について、DONET地震記録を用いたイベントトリガにより地震の検出を進め、研究協力者のサポートもあり。現在2021年3月までの2年分の追加データを準備することができた。 浅部超低周波地震については、当初計画では、海域データによる活動解析が未実施である2016年5月から2020年11月の期間を対象としていた。しかし、2021年度および2022年度に研究対象領域において浅部長低周波地震活動が発生したことから、これらの解析を優先させた。SWIFTパッケージ(Nakano et al., 2008)を適用し、震源位置とメカニズム解をグリッドサーチにより推定することができている。さらに、これらの成果は国等の委員会への資料として提出した。 なお、2022年度後半から、2018年3月から6月にかけて発生した大規模な浅部長低周波地震活動の解析を開始している。本科研費により専用のワークステーションを購入し、解析環境を整えたことで、計算速度が向上し、誤差評価等の所要時間の短縮も達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降も、通常地震活動および浅部超低周波地震活動のカタログ拡充を進める。通常地震については2022年度以降可能な限りのデータを準備する。そして、年度後半を目処に、2022年度に成果として創出した3次元地震波震源を用いた位置再決定を進め、時空間的な活動度の特徴を抽出する。 また、プレート境界付近における地震活動が見られる地域、および浅部ゆっくり滑りが観測された時期に着目し、これらの領域を中心に、通常地震と浅部超低周波地震の時空間関係の把握を進める。具体的には、研究領域を時空間的に区切った範囲内において、2022年に構築した3次元速度構造を初期モデルとした、更に高精度な速度構造解析と震源再決定を進める。 浅部超低周波地震については、2018年の活動の全貌把握を目標とする。推定精度の評価も含めて解析を進める。また、2018年の活動の開始位置が、2022年1月から2月に発生した浅部超低周波地震活動とほぼ同じであることから、これら2つのエピソードの活動について比較を行い、共通項や相違項を明らかにする。 さらに最終年度にむけて、震源決定精度のさらなる高精度化、およびメカニズム解を用いた発生位置の推定を進めるために、波形の相互相関を用いた走時差推定やメカニズム解推定に関する解析環境の整備を並行して行う。
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Causes of Carryover |
ワークステーションの調達および学会参加の航空券手配の工夫により、経費の削減ができたため、次年度使用額が生じた。 近年、航空券料金や国際学会の参加費用の値上げが続いていることから、次年度使用額については、国際学会もしくはシンポジウムへの参加費用の補充としての利用を計画している。
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