2023 Fiscal Year Research-status Report
高温高圧実験と有機反応解析によるスラブにおける堆積物有機物を介した炭素循環の解明
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22K03769
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠崎 彩子 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80570506)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 炭化水素 / C-O-H流体 / 堆積物有機物 / 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル / GCMS |
Outline of Annual Research Achievements |
地球表層から地球深部へと物質が供給される唯一の領域である沈み込むスラブにおいて、堆積物有機物は二酸化炭素などの揮発性流体や炭酸塩鉱物などの無機鉱物と並ぶ重要な炭素のリザーバーであり、その安定性や化学反応を理解することは、スラブひいては全地球規模での炭素循環の解明のために必要不可欠である。 本研究では堆積物有機物の重要な構成要素である炭化水素に着目し、スラブに相当する高温高圧条件での炭化水素の安定性や化学反応を明らかにすることで、地球表層から深部への堆積物有機物を介した炭素循環メカニズムの理解に寄与することを目標としている。 計画2年目の本年度は、昨年度に引き続きスラブの高温高圧条件を想定した室内実験を進め、堆積物有機物のモデル物質である複数の有機物、特にアルカンやアルケンを対象として、ダイヤモンドアンビルセルやピストンシリンダーを用いた高温高圧実験および、高温高圧下その場ラマン測定や、回収試料のラマン・赤外分光測定、さらにはGC/MSをはじめとするいくつかの質量分析法により、化学反応が進行する温度圧力条件を評価した。得られた結果を基に、高温高圧条件における、炭化水素の反応メカニズムを検討し、特に反応に対する圧力の影響とスラブに豊富に存在する水の影響を評価した。本年度得られた研究結果のうち、1-アルケンの高温高圧下における相関係と、化学反応メカニズムについては学会発表での成果発表を行い、国際学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
反応の温度圧力条件を探るための、外熱式ダイヤモンドアンビルセルと高温高圧下ラマン測定を組み合わせた実験と、詳細な反応メカニズムを調べるためのピストンシリンダーによる高温高圧合成と回収試料の化学分析を組み合わせた実験の二つの手法を用いて実験を進めた。複数のモデル物質を対象に、反応の温度条件や具体的な反応メカニズム、さらにはその圧力依存性を調べた。複数の炭化水素を対象に反応の温度圧力条件の解明に至った。一方で、水の影響を十分検討するためにはさらなる追試を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の沈み込み帯の環境を想定して、複数のケイ酸塩鉱物と共存する条件での実験を進め、影響を評価する。結果をもとにスラブでの炭化水素を介した炭素循環メカニズムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度の実験装置の不調の影響で実験の計画が当初予定より遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度は水の影響を調べるためのさらなる高温高圧実験を今年度に引き続いて進めつつ、実際の沈み込み帯の環境を想定して、複数のケイ酸塩鉱物と共存する条件での実験を進めていく計画である。
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