2022 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between fault slip and viscous fluid in hypocentral area of inland earthquakes
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22K03770
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 陽一郎 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80466458)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粘性流体 / InSAR / 断層すべり / 内陸地震 / 余効変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年岩手宮城内陸地震についてはUnicycle(Barbot et al., 2017; Moore et al., 2017)において初期応力を与えることに成功した。西落ちおよび東落ち断層の双方に地震時の応力降下量に比例する量の初期応力を設定し、さらに西落ち断層の深部延長が栗駒山西部地下の粘弾性(低粘性)領域を貫くように設定して地震後の余効変動を計算し、InSARおよびGNSSデータと概ね整合的な計算結果を得た。具体的には断層近傍と遠方の双方の2.2年間の累積観測量が概ね整合的になった。いまだに若干の数値不安定があり、その原因が断層面においてすべりを与えるグリッドと応力を評価するグリッドの幾何学的な位置関係が空間的に一様でないためと分かった。現在、これを断層面全体で一様になるように修正している。ここまでの研究成果を国際学会で発表した。 台湾については当初南西部の2016年Meinong地震のみをターゲットとしていたが、昨年(2022年)台湾東部で発生した一連の地震も台湾の山地における粘性流体と断層運動の相互作用の影響を受けることが強く期待されるため、ALOS-2のSARデータを用いてInSAR解析およびPixel Offset解析を行った。台湾のSAR画像は電離層擾乱の影響を強く受けている。そこで電離層の分散特性を利用して擾乱の影響を除去するノウハウを確立し、これを用いて一連のInSAR画像を補正した。さらにInSARデータの補正に用いるGNSSデータも台湾側の共同研究者から入手し、これに時系列解析を施した。このように、本研究でInSARとGNSSデータを混在利用する環境を整備した。成果を国内の学会で発表した。また、論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
InSAR解析において電離層擾乱が大きな問題になることは予め想定しており、これを除去する目途が立ったことは大きな前進である。これによりALOS-2が撮像したSARデータの時系列解析の精度が大幅に向上した。GNSSデータを補正に用いることもあるが、時としてGNSSデータを検証することも可能なほどにInSARデータの精度が向上した。また特に岩手宮城内陸地震の数値モデリングにおいて断層面上の初期応力を地震時応力に比例させることで数値計算が安定してきた。一方で本研究課題のテーマは粘性流体と断層運動の相互作用であるのに、断層すべりの計算を安定化させることに時間を取られて、粘性流体の特性を掴むことにあまり時間をかけることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
岩手宮城内陸地震については、断層面のすべりを与えるグリッドと応力を評価するグリッドの位置が断層面全体において一様になるように作成する。これにより安定して余効すべりの計算ができるようになり、結果として深部粘弾性領域との相互作用もより良く拘束できるようになるはずである。さらに、部分溶融体の粘性流動に関する最新の室内実験結果と照らし合わせ、深部の粘性流動する領域の物性をより物質科学的な観点から議論する。さらに岩手宮城内陸地震の北部においても流体と断層運動の相互作用が指摘されているため、この領域の数値モデルをより詳しく構築する。最後に、より多様なレオロジーを考慮するためにUnicycleと平行して商用有限要素法ソフトウェアを使用する。 台湾については、南西部および東部で発生した一連の地震およびその余効変動についてInSARあるいはPixelOffset法とGNSSを組み合わせて面的な変形場を導出する。台湾のInSAR画像は電離層擾乱の影響を非常に強く受けるため電離層の分散性を用いてその影響を除去するのだが、これまでのGomba et al. (2016)だけでなくWegmuller et al. (2018)による手法も取り入れてより精密な除去を行う。このように補正したInSAR時系列解析の結果とGNSS速度場を併用して変形速度場を推定し、さらに近年公開された最新のBouguer重力異常の成果を考慮して泥と断層運動の相互作用を数値モデルに取り入れる。ここでも粘性流体のレオロジーを拘束する際にはUnicycleと商用有限要素法ソフトウェアの併用を試みる。結果を国内外の学会で発表する。また、論文を執筆し、投稿する。
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Causes of Carryover |
AGU Fall meetingで結果を発表する予定であったが、航空券や滞在費の価格高騰に加えて円安の影響で旅費が非常に高かった。さらに新型コロナウィルスに感染する危険もまだ低くは無かった。以上を考慮して現地発表の予定をオンライン発表に切り替えたために旅費が想像よりも抑えられた。R5年度はAGUに参加・発表する予定である。またH-3ロケットの打ち上げが遅れたためにALOS-4衛星の打ち上げもまた延期され、その影響でJAXAがALOS-2衛星の延命策を取った。その結果、ALOS-2衛星の海外撮像頻度が減少し、今年度に限っては当初想定していたほどのSARデータは必要無かった。むしろ既存のInSAR画像の電離層擾乱の影響を除去する手法を改善していたため、データの総量はそれほど増えなかった。よって拡張ストレージの購入はR5年度に先送りした。数値計算については計算不安定を解消することに時間を割いたため、高速の計算機はこの問題が解決されるR5年度に購入する計画である。
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