2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K03779
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
兵頭 政幸 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 名誉教授 (60183919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 雄介 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10399818)
ブラダック・ハヤシ バラージュ 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (10919509)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水熱実験 / レス / 磁鉄鉱 / 赤鉄鉱 / 超常磁性 / 単磁区 / Vortex state |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度のレス試料を用いた水熱加熱実験により、200℃の一定温度で加熱時間を変えると、時間に比例して帯磁率が増加することが明らかになった。そしてその増加の原因は、超常磁性(SP)の磁鉄鉱と赤鉄鉱の生成であることも分かった。ただし、時間とともに帯磁率が一様に増加するのではなく、ある時間の区間減少が起こり、それを越えると再び増加に転じることが分かった。この減少は元から含まれていた砕屑性磁鉄鉱粒子の高温酸化が原因であると解釈されていた。今年度はこれらの実験結果を異なる温度でも再現できるか調べた。また、SPより大きい単磁区(SD)やVortex stateサイズの粒子の生成の有無についても調べた。 温度200℃での追加実験を行い、170℃での1~1400時間の水熱加熱実験を行った。そして、実験後の試料の磁気ヒステリシス測定、IRM獲得実験・解析も行った。その結果、時間とともにSPサイズの磁鉄鉱・赤鉄鉱粒子の増加で帯磁率が増加する。途中一時的に減少するが増加し続けピークを過ぎると一様に減少する。一時的な減少とピークは200℃の方が短い時間で起こっている。単位時間当たりの増加率は200℃の方が大きい。SDサイズ以上の磁鉄鉱、赤鉄鉱も増加することも分かった。そして、ある加熱時間帯で帯磁率が減少する現象は、SDサイズ以上の磁鉄鉱の大幅な減少に起因する。その減少は生成したSD磁鉄鉱の高温酸化による赤鉄鉱化である可能性が高いことが分かった。150℃での水熱加熱実験、帯磁率測定を行い、200℃、170℃の実験結果の再現性を確認した。帯磁率増加率は、150℃、170℃、200℃の順に大きくなることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レスの土壌化による帯磁率増加の原因が、まずSPサイズの磁鉄鉱と赤鉄鉱の生成によることの確実な証拠を得ることができた。そして、残留磁化を持つSDサイズ以上の磁鉄鉱と赤鉄鉱の生成も起こっており、加熱時間に比例して増加することも確認できた。さらに、異なる温度で異なる帯磁率増加速度が確認できたので、自然界での土壌性磁性鉱物の生成速度を見積もるめどがついた。残留磁化に寄与する磁性粒子も生成されることが分かり、古地磁気の磁化固着深度の問題解決に貢献できる可能性も出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は帯磁率の加熱時間による増加速度を正確に見積もることに集中する。レス試料にはマグヘマイトが含まれており、水熱加熱によるマグヘマイトの分解に伴う帯磁率変化成分が存在することが考えられる。これを除去することで正確な帯磁率増加速度が出せて、自然界での増加速度の正確な見積もりにつながる。そのためにはIRM成分解析が重要となる。また、X線回折と査型電子顕微鏡観察を行って、水熱加熱により磁鉄鉱、赤鉄鉱が生成されることの磁気的証拠以外の証拠も得る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の大きな理由は、試料の加熱時間が予想以上に長くかかったことである。帯磁率増加のピークを迎えるまで加熱時間は200℃で約340時間、170℃で約950時間、150℃で約1350時間必要であった。装置の制約により最高加熱温度が200℃であるため、それ以下の温度でしか実験できず、つまり反応速度を上げることはできないため時間がかかった。 水熱加熱実験後の試料のヒステリシス測定とIRM獲得実験は全国共同利用施設(高知大学海洋コア国際研究所)で行ってきた。令和5年度の前半は、ある程度試料が溜まった段階で(数か月ごとに)共同利用施設へ出張して実験を行ってきたが、試料は実験後時間経過とともに変質することが分かったので、後半は1-2か月ごとに出張・分析するようにした。令和6年度は1-2か月ごとに出張・分析を行う方針である。次年度使用額はこれにあてる。
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