2022 Fiscal Year Research-status Report
隠岐帯変花崗岩類の火成活動史の意義:北東アジア古原生代テクトニクスの解明
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22K03780
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
亀井 淳志 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60379691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和田 正明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50213905)
中野 伸彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20452790)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
遠藤 俊祐 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60738326)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 隠岐 / 変花崗岩 / 地帯構造 / 北東アジア / 古原生代 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年次は隠岐変成岩の露出域を対象に変花崗岩類の分布・産状・岩相に関する綿密な調査と試料採取を実施した.調査の結果,変花崗岩類は(1)変成岩の面構造に沿う併入岩,(2)面構造に斜交する貫入岩,(3)数m~十数mの岩塊を確認した.(1)は数m規模の小規模なものが多い.(2)は数m規模から十数m規模で最も一般的である.(1)と(2)は互いに一連のことも多い.(3)は当地の露出が良くないこともあって明確なものは1箇所であった.いずれも準片麻岩との若干の同化作用を示唆する産状を持つことが有る. 初年次に導入した偏光顕微鏡による各岩石の観察では,全てが斜長石・石英・アルカリ長石を主体とする変花崗岩と認められた.有色鉱物では,少量の白雲母もしくは黒雲母を伴うもの,そして両雲母を伴うものが認められた.産状の違いと鉱物組み合わせとの間に規則性は認められなかった.すなわち,上記の(1),(2)および(3)は鏡下において特に違いは無いと言える. その後に採取試料の蛍光X線分析(XRF)に取り掛かった.化学組成について産状や鉱物組み合わせとの関連を検討するも,特に際立つ規則性は無いと分かった.分析値はハーカー図等において非常にバリエーションに富んでおり,いわゆる火成岩のマグマトレンドを示さなかった.花崗岩類は当初幾つかのタイプに明瞭に区分されると予想していたが,むしろ不規則に様々なものがあるという印象であった,この解釈には準片麻岩との同化の影響やマグマ内における鉱物の集積の検討が必要である.この様な認識はこれまで変花崗岩類に無く,現時点における成果と言える.花崗岩マグマの形成場を判別する地球化学的判別図によると,火山弧型,衝突帯型,プレート内型など,多岐に渡ることが分かった. 以上より,変花崗岩類の充実したデータ獲得は進んだが,現時点で成因を特定できるまでの解析には至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年次は変花崗岩類の分布・産状・岩相に関する綿密な調査と試料採取が最も大事であった.花崗岩類の産状や分布を確認し,必要な試料採取が順調に進んだ.これを1年目でほぼ完遂で来たことは大きな成果であった. また初年次に予定どおり偏光顕微鏡を調達し,隠岐変成岩の分布域に産する変花崗岩の岩相を一通り観察できた.組織と鉱物組み合わせに関して,産状や地域で大きな違いが無いことが確認できた.これも予定通りに遂行できた. さらに採取した試料の蛍光X線分析(XRF)にも取り掛かれた.隠岐変成岩類の全域をカバーする形で変花崗岩類の化学分析を実施した.分析値はハーカー図等で広いバリエーションを有し,火成岩のマグマトレンドを示さなかった.地質調査,顕微鏡観察,全岩化学分析によって幾つかのタイプ分けが可能であろう考えていただが,予想に反して明瞭な区分けができるような特徴が無いことが分かった.また,花崗岩マグマの形成場を判別するための地球化学的判別図を使用すると,様々なタイプに組成が分散した.このような特徴は隠岐の変花崗岩類に対して知られておらず,新たな認識となった.以上より,必要なデータ取得は実施できたことから,初年次としては研究の進捗状況が順調と判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は変花崗岩類に関する産状,記載,全岩化学分析が順調に進んだ.計画当初では,これらのデータに基づきながら「共通の特徴を持つ変花崗岩の集団」に幾つか区分することを想定していた.しかしながら,変花崗岩類は岩相変化に乏しい一方で,化学組成のバリエーションが非常に大きなことが分かった.これは新たな知見であったが,予定の集団区分には至らなかった. このことは,「複数のタイプの異なるマグマ活動があった」という形ではなく,花崗岩マグマの活動プロセスがやや複雑で,例えば集積作用や母岩との同化作用などの影響を受けていることが考えられる.このことは今後の微量元素組成分析やSr/Nd同位体比分析によって,より詳しく浮き彫りにできる可能性が有る.当初の次年度計画には,これらのデータによって結晶過程や母岩との同化作用も検討予定であったが,より慎重にデータを検討する必要がでてきた.この様な前提に立ちながら,変花崗岩を作ったマグマの活動様式(テクトニクス背景)を検討していく.また,これらが明らかとなれば,同データに基づいて花崗岩マグマの起源物質やマグマ生成条件の解析を進め,その活動場の考察に入る.さらに年代測定が進めば,隠岐片麻岩の北東アジアにおける地質構造上の位置づけも明らかとなってくる.
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Causes of Carryover |
本年度の研究状況は大変順調であるが,コロナ禍の影響を多少受けて,当初の旅費使用や消耗品調達にて残額が生じた.これは次年度以降の研究に活用し,研究の充実化をはかる.
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Formation of corundum in direct contact with quartz and biotite in clockwise P-T trajectory from the Sor Rondane Mountains, East Antarctica2022
Author(s)
Hokada, T., Adachi, T., Osanai, Y., Nakano, N., Baba, S., Toyoshima, T.
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Journal Title
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
Volume: 226
Pages: 8
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Petrology and zircon Pb geochronology of pelitic gneisses and granitoids from the Dai Loc Complex in the Truong Son Belt, Vietnam: Implication for the Silurian magmatic-metamorphic event2022
Author(s)
Vuong, B.T.S., Osanai, Y., Nakano, N., Kitano, I., Adachi, T., Tuan, A.T., Binh, P
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Journal Title
Journal of Asian Earth Sciences
Volume: 226
Pages: 105070
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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