2022 Fiscal Year Research-status Report
粘弾性地殻変動シミュレーションモデルによる巨大噴火準備過程の解明
Project/Area Number |
22K03784
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 雅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30760235)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粘弾性緩和 / マグマ供給 / 応力蓄積 / 緩和時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マグマを大きく溜め込んでいるのに噴火活動が不活発な火山もあれば、マグマを大きく溜め込んでもいないのに活発な噴火活動をみせる火山があることの理由に説明を与えようとしている。粘弾性地殻変動シミュレーションモデルを用いて、マグマ溜まり周辺の応力状態を予測し、「応力緩和が卓越して火道が収縮するモード」と「応力蓄積が卓越して火道が拡張するモード」を支配するパラメータを明らかにしていく。2022年度は、当初の計画通り、実際の地殻岩石が持ちうる粘性流動特性の範囲において、応力緩和が卓越して火道が収縮するマグマ供給速度と、応力蓄積が卓越して火道が拡張するマグマ供給速度について解析した。その結果、マグマ溜まりが地殻内のどの深さで定置して発達するのかに依って、応力緩和の程度が違ってくることを確認した。深さ依存性を持つ地殻内粘性構造における上層は、温度が低いため、応力緩和が進まない弾性層として振る舞うが、マグマ蓄積がそのような有効弾性層内の浅いところで発達すると、マグマ蓄積による応力を有意に緩和させることができない。一方、有効弾性層下においてマグマの蓄積が進行すると、応力緩和は有意に進行し、有効弾性層内でのマグマ蓄積に比べて、応力蓄積量を減じさせることができる。しかし、マグマ蓄積が一定のレートで進行するような場合、たとえ粘弾性緩和により応力蓄積量が減じられたとしても、ゆっくりとはいえ応力の蓄積は進行することになるため、火道収縮モードが卓越するにはマグマ蓄積がある程度以上の期間停止する必要がある。その停止期間の下限の目安は、地殻が持つ有効緩和時間の10%程度であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画について取り組み、今後の研究の礎となる重要な知見を得ることができた。事象を支配するパラメータを系統的に整理することは十分にできなかったが、来年度計画に掲げる地殻変動観測から応力状態を推定することに取り組みはじめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、支配パラメータへの依存性をより詳細に解析しつつ、地殻変動の実測から推定された粘弾性構造にもとづいて、火山(姶良カルデラ・屈斜路カルデラ)下における応力状態の定量的な把握をすすめていく。また、火道の収縮・拡張モードの境界についてもより詳細に明らかにしていく必要がある。
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Causes of Carryover |
地殻変動シミュレーションの結果として出力される変位や応力の情報をさらに詳しく解析するために必要となる処理能力の高いワークステーションが予定より少額で購入できたため。次年度において、国内外の関連研究者との、対面形式も含めたより多角的な学術的議論の展開に使用する予定である。
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