2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of an unique organic matter maturation cycle in the Paleoproterozoic: potential driving force for life diversification
Project/Area Number |
22K03790
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 章純 東北大学, 理学研究科, 助教 (10633638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
掛川 武 東北大学, 理学研究科, 教授 (60250669)
橋爪 光 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (90252577)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 前期原生代 / NanoSIMS / 微化石 / 段階燃焼 / 生命進化 / 石油 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,代表者および分担者が過去採集していた,ロシア,ザオネガ層のボーリングコアを中心に炭素窒素の同位体分析とその議論を進めた.結果を共同研究者とともに「Nitrogen isotope geochemistry constraints on Paleoproterozoic nutrient supplies in ca. 2.0 Ga Zaonega Formation in Russia」として国際誌投稿に向けてまとめている.さらに19億年前ガンフリント層の浅海性有機物脈を含む試料の分析に着手したことで,同地質時代の海底深部および浅部における堆積有機物の石油化プロセス解明に必要な試料を得た.手法の開発においては,硫黄のマイナー同位体である33硫黄を,連続フロー型質量分析計により分析可能となる手法を開発し,標準試料を用いた検討により方法論を確立した.NanoSIMSを用いた有機物の炭素窒素水素同位体の同時イメージング手法を,同位体比が極端に異なる地球外有機物を標準物質に用いることで初めて確立した.これらの成果については論文化に足るデータを取得できたので投稿論文の準備を進めている.さらに同時代の微生物化石を対象とした微量元素のイメージング法の確立に成功し,「High-resolution imaging of biogenic phosphorus and molybdenum in Paleoproterozoic Gunflint microfossil」として論文投稿を行う予定である.前期原生代大規模有機物脈の形成要因の地球化学的読解,および有機物脈の当時の微生物活動との関連解明に必要なツールが揃い,課題目標達成に向けて議論及びデータ解析を精力的に進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者の健康上の問題で,計画していた海外地質調査を自ら行えない状況となったため分担者に地質調査を一任したが研究の遂行自体に大きな問題はない.一方でアメリカ,マーケット層の無煙炭試料の入手には時間がかかっており引き続き交渉を続ける.ザオネガ層試料について,今年度は球状の固化石油状物質を含む炭酸塩層も対象に加え分析および議論を行なった.この層序は下部の黒色頁岩から上部の砂岩層への遷移層であり球状物質は下部の大規模石油脈から流動してきた可能性が高いことが,炭素窒素の同位体,希ガスの質量比から示された.これはマグマを熱源にした堆積物直下での石油生成とその流動を示す直接的な証拠であり,炭素窒素の同位体から示したのは初めてである.20億年前ガンフリント層の浅海性有機物脈を含む試料も新たに入手した.その産状や化学組成によりこれが同時代かつ現地性の堆積有機物が浅部マグマ活動によりその場で石油化し形成された可能性が示唆された.NanoSIMSを用いた微小領域同位体分析手法の開発も順調で,有機物の炭素窒素水素同位体の同時イメージング手法の論文化にこぎつけた(Rapid Communication of Mass Spectrometryに投稿予定).さらにNanoSIMSを用いた微小領域同位体分析として同時代の微生物化石を対象とした微量元素のイメージング法の確立に成功し,「High-resolution imaging of biogenic phosphorus and molybdenum in Paleoproterozoic Gunflint microfossil」として論文投稿を行う予定である.この手法は本研究の固化石油層にも適用可能であり,微量金属元素やリンに注目した環境や微生物活動の議論への新たな評価法の導入を検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度としてこれまでの成果を統括しつつ,確立した新しい手法をアプライし多面的な環境,微生物活動の評価を行う.ザオネガ層およびガンフリント層を対象とすることで前期原生代の全地球的な環境において堆積生有機物の石油化が起こっていた可能性を明らかにできつつある.これはこの時代に起こったとされている超大陸形成に伴う大規模火成活動を熱源にしたものであり,地球のダイナミクスが大規模な石油を産み,これこそが当時の生物進化を促したという本研究課題のモデルを十分に説明するものである.NanoSIMSによる同位体,及びリンなどの微量元素の分析法開発に成功したことでこれまでの研究では成し得なかった,大規模石油脈によるリンや微量金属元素を含む栄養源の供給有無が明らかになると期待される.また,前年度より導入されたガスクロマトグラフ(GC)連結型の同位体質量分析計(GC-C-IRMS)を用いて,有機物脈に僅かに残された可溶性有機物や有機硫黄化合物の炭素同位体比値の測定測定を進める.天然の有機物では目的の分子の単理が困難でありガスクロ側の条件の設定が鍵となるため,様々な標準試料有機分子を用いて分析メソッドの確立に取りくんでおり,これを継続する.硫黄同位体の分析については33硫黄の分析法を確立できたことにより,当初の目的であった有機物脈中の活性硫黄が関連した硫黄同位体比分別の痕跡を追える可能性が見えてきた.これらが明らかになることで,当時の石油脈から生態系への硫黄を含む有機栄養源の供給経路の発見が期待される.2022年度に報告したこの時代の多様化した微生物は,こうした地球規模のダイナミクスが駆動した物質循環を前提にしている可能性があり,本研究により前期原生代における特異な有機物循環が生命進化に与えた影響を地球化学から評価する統括的な説の提唱を目指す.
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Causes of Carryover |
分担者の橋爪が段階燃焼法にの改良に伴う一部真空装置や試料燃焼を補助する金属触媒等を今年度購入する予定であったが,装置の改良を代表者の石田が設備の関係で主に行うこととなり,また測定データの処理プログラムの改良および燃焼における手順の効率化簡略化により,年度内に予算を使用する必要がなくなった.一方で,燃焼ラインで使用している標準ガスの貯蓄システムには改修の必要があり,現在使用中のガスの残量を鑑みても,次年度にこれを大改修する必要が出てきた.そこで今年度未使用で済んだ分を次年度の使用に当て,研究課題のより効率的な遂行のために標準ガスシステムの改良と改善に当てることとした.
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