2022 Fiscal Year Research-status Report
白亜紀アンモナイト類の化石記録から読み解く海生生物の浮遊幼生期と多様化との関連性
Project/Area Number |
22K03794
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
和仁 良二 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (70508580)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アンモナイト類 / 白亜紀 / 浮遊幼生期 / 多様化 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶滅生物のアンモナイト類(絶滅した頭足類の一群)は,デボン紀から白亜紀末までの約3億5000万年間で1万種を超えるほどの多くの種が存在し,その進化速度は極めて速かったことが知られている.しかし,アンモナイト類がどのように生息域を拡大し,どのように種分化が生じたのか,そしてなぜ進化速度が速かったのか,その詳細なメカニズムはほとんど理解されていない.これらの解明に向けて,化石記録が豊富で産出個体数の多い白亜紀アンモナイト類の”浮遊幼生期”に関するデータを蓄積した. 今年度は地層の分布やアンモナイト類の産出状況を考慮し,北海道の羽幌,古丹別,達布,幾春別地域で野外調査を行い,アンモナイト亜目,フィロセラス亜目,リトセラス亜目の標本を採取した.さらに,これまでの研究活動において採取済みであるインド南部Ariyalur地域とマダガスカル北西部Mahajanga地域から産出した標本も解析に用いた. 標本は研究室にて,殻の正中線に沿って切断・研磨した.研磨面上において,隣接する隔壁の空間的間隔(中心角)を幼体から成体に至るまで計測した.成長初期に見られる隔壁の空間的距離の大きな変動が終了して一定の値に移り変わる成長段階を特定した.この段階が”浮遊幼生期”が終了した成長段階であると想定される. 白亜紀アンモナイト類の複数のグループ間で,”浮遊幼生期”の戦略がどのように異なっていたのかを明らかにすることが本研究の目的である. 得られた研究成果は,適宜学術論文および国際会議等において発表する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白亜紀アンモナイト類の分類群ごとにこの”浮遊幼生期”の戦略を復元し,比較した.その結果,以下のことが明らかになった. (1)リトセラスのグループでは”浮遊幼生期”が終了する成長段階がより大きな殻直径である可能性があること(Kawakami et al., 2022). (2)リトセラスのグループでは地質時代とともに”浮遊幼生期”の戦略が変化した可能性があること(Kawakami and Wani, 2023). (3)デスモセラスのグループでは”浮遊幼生期”が終了する成長段階がより小さな殻直径であり,世界中の標本および白亜紀アルビアン期(約1億年前)~カンパニアン期初期(約8000万年前)の期間にわたって,ほとんど変化しなかったこと(Takai et al., 2022). 以上のように,これまでに解析を進めた白亜紀アンモナイト類の中でも異なる”浮遊幼生期”の戦略を見いだしつつある. これまでに得られた成果については,査読付き学術雑誌において発表した.データの蓄積は予定通りで,成果の発表もおよそ予定通りであると言える.また,2022年9月にイギリス・ロンドン・大英自然史博物館で開催された国際頭足類学会において,発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに解析し,データを蓄積してきた白亜紀アンモナイト類のグループ以外においても解析を進め,”浮遊幼生期”に関するデータを蓄積する.そのための研究材料として,引き続き,北海道の羽幌,古丹別,達布,幾春別地域およびインド南部Ariyalur地域とマダガスカル北西部Mahajanga地域から産出した標本を用いる.そのために,夏期には北海道で野外調査を行う予定である.
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