2022 Fiscal Year Research-status Report
力学的非線形性を有する界面を含む積層構造物中の非線形弾性波伝搬挙動の解明
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22K03809
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松田 直樹 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90756818)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超音波 / 非破壊評価 / 接着接合部 / スペクトロスコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,アルミニウム接着接合部における被着体汚染の評価法について検討を行った.接着接合部では汚染や空隙により被着体層と接着剤層の間に両者と異なる力学的特性を持つ領域が存在する.この中間層を界面剛性と呼ばれるパラメータによりモデル化を行うことで,界面の力学特性の評価を行うことを目的に検討を行った.既往の検討では,反射スペクトルに含まれる共振ノッチの周波数によってモデルと実験を比較し,モデルパラメータの最適化を行ってきた.この方法では,①最適化を行う初期値パラメータに対して結果が変化する,②実験から共振ノッチが明瞭に評価できない場合があるなどの問題があった.これらはいずれも接着接合部の安定した評価の妨げとなっていた.そこで本検討では,すべての周波数成分の反射スペクトルの値をモデルと比較することによりパラメータの最適化を行う方法について,検討を行った. 本手法に基づいてアルミニウム合金板を構造用エポキシ接着剤によって接着した試験片に対し,接着剤層厚さと被着体厚さを評価した.評価結果は光学的に測定された接着剤層厚さと被着体厚さとそれぞれ良い相関があった.この結果から本モデルで用いた二重界面モデルおよびすべての周波数成分の反射スペクトルを用いたモデルパラメータの最適化法の妥当性が示された.また,従来法では評価が困難であった対象にも安定した評価が可能になった.一方で,評価された界面剛性は,本来考えられる界面剛性の大きさを大きく上回る結果がほとんどであった.この結果は界面剛性が一定の値以上になると評価関数がほとんど変化しない性質のため,解析が発散した結果と考えられる.このため,本検討で用いた試験片の界面剛性の範囲では本手法の適用は本質的に難しいことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では接着接合部の界面が非線形な力学特性を有する場合の高調波発生挙動の理解がその第一の目的である.またこれにより被着体汚染による弱接着部の有効な評価法の提案が第二の目的である.本年度の研究では評価対象の非線形性にまで研究が進められておらず,この点は予定の研究進捗よりも遅れていると判断される.一方で,全ての周波数に対する反射スペクトルをモデルと比較することによりパラメータの最適化を行う方法は従来用いてきた方法の欠点を改善することに成功しており,想定とは別の内容で進捗があったと言える.進捗より遅れている点と想定とは別の進展があったため,両者を勘案して概ね進捗通りとの評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行ってきた接着接合部の検討結果をもとに,引き続き接着接合部の健全性評価のための検討を行う.今後は積層構造における位相整合条件の理論的な解析に取り組む予定である.具体的には界面が非線形な力学特性を有する積層構造物の高調波発生挙動について,より単純な積層構造を構成する単層中の伝搬挙動から理解するための理論的な解析を行う.また,1-2年目に行う予定としていた,一般的な対象における高調波の測定に適した条件の検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度検討では,積層構造物に対する高調波測定に適した条件の理論的な検討が完遂しておらず,予定していた積層板に対して面害方向に圧縮しながらガイド波を伝搬させるモデル実験系を組む必要がなくなった.そのため,当該検討のために必要としてた装置費が不要となった.2023年度は当該装置を導入して,その準備に当たる予定である.
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