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2023 Fiscal Year Research-status Report

Mechanism of Hydrogen Embrittlement of Aluminum alloys Using Wet Process

Research Project

Project/Area Number 22K03816
Research InstitutionHiroshima Institute of Technology

Principal Investigator

日野 実  広島工業大学, 工学部, 教授 (70510486)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsアルミニウム合金 / 水素脆性 / 表面処理 / 疲労試験 / 水素分析
Outline of Annual Research Achievements

政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラルに向け、水素を2次エネルギーとして活用する動きが活発化しており、今後、水素の貯蔵・運搬・利用の各工程において、構造金属材料と水素との接触するケースが増加すると予想される。そのため、水素環境で優れた機械的特性を発揮する金属材料の開発が重要な課題となっている。軽量金属材料であるアルミニウム合金は、鉄鋼材料と比較し、環境由来の水素脆性に対して高い耐性をもつ構造金属材料として位置づけられている。しかし、これまで特定のめっきによってアルミニウム合金中に吸蔵された内在水素が疲労強度を大幅に低下させることを明らかにした。
本研究では、アルミニウム合金の機械的特性に及ぼすめっきによる内在水素の影響を明らかにするとともに、水素脆性のメカニズムを解明する。さらに水素脆性の生じない表面処理を開発し、水素社会構築を実現し、カーボンニュートラルの達成を目指す。
2022年度の研究では、アルミニウム合金の疲労強度に及ぼす各種めっきの影響は、アルミニウム合金の種類およびめっき種類によって大きく異なることを明らかにした。また、疲労強度の低下にはアルミニウム合金中の水素の存在状態に基づくことが判明した。
2023年度の研究では、各種展伸材用アルミニウム合金に対する無電解ニッケル-リンめっきによる疲労強度の低下は、水素空孔クラスター説に基づき、めっきの際に材料中に吸蔵した水素が空孔を誘起し、その水素誘起空孔が負荷荷重によって移動、合体することでナノボイドを形成する。このナノボイドが応力集中源となり、疲労強度が低下することを明らかにした。なお、疲労破壊の起点部には数百ナノメートルサイズのナノボイドが観察され、ナノボイドの生成を支持する結果が得られている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

4種類の展伸材用アルミニウム合金(2017-T4、5052-H14、6061-T6、7075-T6511)に対して、2種類の無電解ニッケル-リンめっき(低リンタイプ、高リンタイプ)および亜鉛めっき(硫酸酸性浴)を平均膜厚が10μmになるよう施した。めっき処理前後の試験片について、三点曲げ試験および動的な回転曲げ疲労試験を行った。
三点曲げ試験の結果、めっきおよび合金の種類によって破断に至る変位量が異なった。2017-T4および7075-T6511合金では、めっきの種類に関わらず、破断応力および破断に至るまでの変位量は未処理材とほぼ同じ値であり、めっきの影響は認められなかった。一方、5052-H14および6061-T6合金では、亜鉛めっきによる曲げ特性への影響はほとんど認められなかったが、無電解ニッケル-リンめっき材では、低リンタイプおよび高リンタイプいずれも未処理材と比較し、破断に至る変位量が低下した。一方、回転曲げ疲労試験では、高リンタイプの無電解ニッケル-リンめっきを行った全てのアルミニウム合金の疲労強度は、未処理のそれよりも大幅に低下した。逆に全ての低リンタイプの無電解ニッケル-リンめっき材の疲労強度は、未処理のそれよりも向上した。その他、亜鉛めっきを行った全てのアルミニウム合金の疲労強度は、未処理よりも僅かに低下した。高リンタイプの無電解ニッケル-リンめっき材の疲労強度が大幅に低下する一方で、静的な三点曲げ試験では、破断に至る変位量は低下するものの、破断応力は低下しなかった。これらの結果は、疲労試験ではボイドが応力集中源となるため、疲労強度の低下を誘引するが、静的な荷重では、ボイドは延性を低下させるが破断応力への影響は軽微であり、これらの結果からもアルミニウム合金の水素脆性のメカニズムとして、水素空孔クラスター説によるボイド形成が有力であることが示唆された。

Strategy for Future Research Activity

2022年度の研究において、中リンタイプおよび高リンタイプの無電解ニッケル-リンめっきを各種アルミニウム合金に施すことによって疲労強度が低下することを明らかにした。また、水素測定の結果から、めっきによって基材中に取込まれた水素が疲労強度の低下を誘引し、アルミニウム合金も水素脆性が生じることを示した。
2023年度の研究では、各種アルミニウム合金に対して高リンタイプおよび低リンタイプの無電解ニッケルめっきならびに電気亜鉛めっきを行い、低ひずみ速度三点曲げ試験による水素脆性評価を行い、水素脆性に及ぼす無電解ニッケルめっきの影響を明らかにし、アルミニウム合金の水素脆性メカニズムを解明した。
2024年度の研究では、2023年度の研究において明らかにした水素脆性メカニズムに基づき、アルミニウム合金に対して水素脆性フリー、高耐食性表面処理技術を確立する。具体的に、アルミニウム合金に対してリン含有量の異なる無電解ニッケルめっき、亜鉛系めっき、複合めっき等検討し、また、めっき後に水素を放出させるベーキング処理も検討する。さらにめっき膜厚の最適化も行い、水素脆性フリー、高耐食性表面処理技術を確立する。

Causes of Carryover

予定していた物品購入を次年度に繰り越したため

  • Research Products

    (14 results)

All 2024 2023

All Journal Article (7 results) (of which Peer Reviewed: 7 results) Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 耐水素脆化特性に優れた高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっき2024

    • Author(s)
      野崎匡文,片山順一,長尾敏光,日野 実
    • Journal Title

      表面技術

      Volume: 75 Pages: 97-101

    • DOI

      10.4139/sfj.75.97

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Al-4%Ge合金の疲労強度に及ぼす表面層と水素の影響2023

    • Author(s)
      金谷輝人,日野 実,堀川敬太郎,永田教人,中川恵友
    • Journal Title

      日本金属学会誌

      Volume: 87 Pages: 103-107

    • DOI

      10.2320/jinstmet.JC202108

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 表面亜鉛成膜によるAl-Zn-Mg系合金の環境水素脆性の抑制2023

    • Author(s)
      堀川敬太郎,鍬田英樹,福室直樹,日野実
    • Journal Title

      日本金属学会誌

      Volume: 87 Pages: 108-113

    • DOI

      10.2320/jinstmet.JC202101

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 三点曲げ試験および回転曲げ疲労試験による無電解Ni-Pめっき処理した6061-T6アルミニウム合金の水素脆性の評価2023

    • Author(s)
      日野 実,進野諒平,川上滉太, 桑野亮一,門田宏治,佐藤雅亮,小田幸典,堀川敬太郎,金谷輝人
    • Journal Title

      日本金属学会誌

      Volume: 87 Pages: 114-119

    • DOI

      10.2320/jinstmet.JC202104

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 高強度鋼の水素脆性に及ぼすZn-Ni合金めっき膜に形成されるマイクロクラックの影響2023

    • Author(s)
      日野 実,小田智也,進野諒平,川上滉太,堀川敬太郎
    • Journal Title

      日本金属学会誌

      Volume: 87 Pages: 120-124

    • DOI

      10.2320/jinstmet.JC202105

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 三点曲げ試験によるアルミニウム合金の水素脆性評価と各種めっきの影響2023

    • Author(s)
      川上滉太,日野実,桑野亮一,小田幸典,堀川敬太郎,金谷輝人
    • Journal Title

      軽金属

      Volume: 73 Pages: 196-200

    • DOI

      10.2464/jilm.73.196

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Evaluation of Hydrogen Embrittlement of Electroless Ni-P Plated 6061-T6 Aluminum Alloy by Three-Point Bending and Rotating Bending Fatigue Tests2023

    • Author(s)
      Makoto Hino, Ryohei Shinno, Kota Kawaue, Ryoichi Kuwano, Koji Monden, Masaaki Sato, Yukinori Oda, Keitaro Horikawa, Teruto Kanadani
    • Journal Title

      Materials Transactions

      Volume: 65 Pages: 302-307

    • DOI

      10.2320/matertrans.MT-M2023127

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 各種アルミニウム合金へのめっきによる水素脆性と三点曲げ試験による評価2023

    • Author(s)
      川上滉太,桑野亮一,日野 実,堀川敬太郎,金谷輝人
    • Organizer
      第144回軽金属学会秋期講演大会
  • [Presentation] 放射光X線CTを用いた無電解NiーPめっきAl-Zn-Mg合金の表面近傍組織の解析2023

    • Author(s)
      堀川敬太郎,日野 実,清水一行,戸田裕之,星野真人,上杉健太朗
    • Organizer
      第144回軽金属学会秋期講演大会
  • [Presentation] アルミニウム合金の機械特性を向上させる表面処理技術の開発2023

    • Author(s)
      日野 実
    • Organizer
      2023年度関西表面技術シンポジウム
  • [Presentation] 6061-T6アルミニウム合金の水素脆性に及ぼす無電解NiーPめっきの影響2023

    • Author(s)
      日野 実,川上滉太,黒坂成吾,大久保洋樹,堀川敬太郎
    • Organizer
      表面技術協会第148回講演大会
  • [Presentation] 6061-T6アルミニウム合金への表面処理とその水素脆化挙動2023

    • Author(s)
      川上滉太,黒坂成吾,大久保洋樹,堀川敬太郎,日野 実
    • Organizer
      軽金属学会中国四国支部第15回講演大会
  • [Presentation] Hydrogen Embrittlement of Aluminum Alloys by Various Types of Plating2023

    • Author(s)
      Makoto Hino
    • Organizer
      International Conference on Surface Engineering & Regional INTERFINISH 2023
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Presentation] アルミニウム合金の水素脆性評価への無電解NiーPめっきの適用2023

    • Author(s)
      日野 実,川上滉太,黒坂成吾,大久保洋樹,堀川敬太郎
    • Organizer
      表面技術協会第149回講演大会

URL: 

Published: 2024-12-25  

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