2022 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝数理モデルに基づく皮質骨・海綿骨リモデリングの統合的理解
Project/Area Number |
22K03827
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀尾 佳貴 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (60611431)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 骨代謝 / 骨リモデリング / 皮質骨 / 海綿骨 / 計算バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、骨代謝数理モデルを組み込んだ骨リモデリングのin silico(コンピュータ内)実験基盤を構築し、力学環境に応じた皮質骨・海綿骨リモデリングの挙動をin silicoで再現、予測することにより、その制御メカニズムを分子・細胞ダイナミクスから統合的に理解することを目的としている。以下に、本年度中の主な研究実施内容と、得られた成果をまとめる。
1.力学刺激に対する骨リモデリング則の予測性能評価 マウス尾椎に対する繰返し荷重負荷実験により得られた骨表面移動速度と、同じマウス尾椎のイメージベース有限要素解析により得られた様々な力学量に基づき、骨細胞への力学刺激と骨吸収・骨形成とを関連付ける骨リモデリング則をモデル化し、その予測性能を評価した。相当応力や間質液流れなど、いくつかの静的・動的な力学刺激を候補として骨リモデリング則を定式化した結果、マウスの個体差による影響が大きいため、それらの予測性能に顕著な違いは見られないことが確認された。 2.多細胞ダイナミクスによる組織形態形成の数理モデル開発 皮質骨と海綿骨のリモデリングを統合的に理解するためには、密度の異なる両組織の形成過程を明らかにすることが重要である。そこで、骨形態形成過程において組織内部に働く力の重要性に鑑み、連続体力学をベースとし、かつ、個々の細胞ダイナミクスを追跡可能な新しい組織形態形成の数理モデル開発に着手した。粒子により離散化された物体の変形を連続体力学に基づき解析するMaterial Point Method(MPM)を応用し、本年度までに、組織を構成する細胞の成長と増殖のモデル化に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マウス尾椎のリモデリングに関する時系列データから、骨細胞への力学刺激と骨吸収・骨形成とを関連付ける骨リモデリング則を定式化することができた。また、多細胞ダイナミクスによる組織形態形成を解析可能な新たな数理モデルの開発にも着手し、今後、皮質骨と海綿骨が形成される過程を探求するための基礎を築くことができた。よって、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に導出した骨リモデリング則に基づき、力学刺激に応じた骨細胞のシグナル分子産生から、破骨細胞・骨芽細胞による骨吸収・骨形成に至る骨代謝過程を数理モデル化し、力学的負荷にともなう骨損傷の影響も考慮して、骨リモデリングのin silico実験基盤の開発を進める。また、組織形態形成の数理モデルを長管骨の形態形成に適用し、皮質骨と海綿骨の形成過程の再現を試みる。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究では、主に新たな数理モデルの開発とその基礎検討を行ったため、計算規模が比較的小さく、現有の計算機を使用できたことから、当初購入を予定していた高性能ワークステーションの購入を次年度以降に見送った。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初参加を予定していた国際会議への現地参加を断念した。そのため、これらに関連する設備備品費や旅費に相当する繰越金が発生した。 次年度は、CT画像に基づくイメージベースシミュレーションを実施する予定であり、計算の大規模化が予想されることから、高性能ワークステーションを購入する。また、国際会議や国内学会に参加し、積極的に研究成果を発信する。
|
Research Products
(9 results)