2023 Fiscal Year Research-status Report
Non-destructive evaluation of 3D plastic strain and residual stress distributions induced by earthquakes using non-linear inverse analysis
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22K03831
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
小川 雅 工学院大学, 工学部, 准教授 (90635236)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 逆問題 / 塑性ひずみ / 変位 / 非破壊評価 / X線回折 / 地震 / 配管 / 3次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震発生後、発電プラントの迅速な再稼働の可否の判断が求められている。本研究では、デジタルカメラを用いた画像相関法により非破壊計測した部材表面の変位とX線回折 法により計測した表面ひずみから、それらの原因である3次元の塑性ひずみを逆問題解析により推定できるようにすることを目指している。 地震荷重により生じる塑性変形は比較的大きくなることがあり、発生する塑性ひずみと変位や弾性ひずみとの関係が非線形になるため、原因と結果との関係が非線形となる逆問題を解く必要がある。 2022年度には、熱膨張により塑性ひずみを再現し、そのひずみが生じる場合の変位と塑性ひずみとの関係を利用して、熱膨張により変形させた部材からその原因である塑性ひずみを評価した。非線形問題を解く逆問題解析手法についても数値解析により検証したところ、計測誤差がなければ精度よく塑性ひずみ分布を推定できることを明らかにした。しかし、実際には複数回の塑性変形が生じる可能性があるため、そのような場合でも正しく推定できるかどうかを検証する必要がある。それを検証するためには、複数回の荷重が加わった際の変位から塑性ひずみを推定する必要があるが、熱膨張により生じるひずみと変位との関係と、荷重により生じる塑性ひずみと変位との関係が異なることが判明したため、荷重により生じる塑性ひずみと変位との関係を取得する必要がある。 2023年度には、意図した部位のみに塑性ひずみを生じさせ、その際の変位を取得することで、あらゆる塑性ひずみと変位との関係を取得することを目指した。意図した方向成分のみの塑性ひずみを発生させることはできなかったが、比較的簡便な塑性ひずみと変位や弾性ひずみとの関係を取得することができた。これを用いて逆解析を行い、複数回の塑性変形が生じる場合の本手法の推定精度を評価することが次年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本提案手法の有効性の検証は初年度に行う予定であり、単一の塑性変形が生じる場合の推定精度の評価は行うことができ、提案する非線形手法の有効性も示すことができた。ただ、複数回の塑性変形が生じる場合の検証においては、荷重により生じる塑性ひずみと変位や弾性ひずみとの関係を取得する必要があり、意図した方向成分の塑性ひずみを意図した要素のみに生じさせる必要がある。そこで、有限要素解析ソフトの開発元と相談したが、現在のソフトウェアでは限界があり、かなり高額の特別な対応が必要であるとのことであった。他の有限要素解析ソフトでは可能であることを聞いていたため、予想外の問題であった。その対策を検討するのに時間を要したが、手法の有効性の検証をするだけであれば、解析モデルをより簡易的なものに変更することで対応できることがわかった。そのため、まずは本提案手法の複数回の塑性変形が生じる場合に対する有効性を評価し、その後、さらに対象とするモデルを発展させる上で解析ソフトウェアの見直しをすることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に、本提案手法の有効性を評価するための基礎データを構築することができたため、まずはそれを用いて、2回の塑性変形が生じる場合の手法の有効性を検証する。これにより、正しく推定することができた場合には、より多くの塑性変形が生じる場合の推定精度について確認する。そして、比較的多くの未知数を推定できるように、モデルを複雑化し、さらには実際の配管モデルに対する適用を目指す。また、簡易的な部材を用いて、本提案手法の実証実験を行い、実際の計測精度の影響やそれによる本手法の推定精度について考察する。 一方、複数回の塑性変形が生じる場合に、表面変位と弾性ひずみの値から原理的に塑性変形を推定することが難しいことがわかった場合には、比較的精度よく推定するための逆解析手法についてさらに検討し、その有効性を数値解析により検証する。 そして、上記の検証結果をもとに、問題点などを整理した上で報告内容をまとめ、学術論文や学会発表などにより成果を公表する。
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Causes of Carryover |
当初、実験計測において多くの費用を要する予定であった。部材を用意して塑性ひずみを生じさせ、デジタル画像相関法による変位計測を実施したり、可搬型のX線回折装置によるひずみ計測などを検討していた。しかし、本提案手法の原理検証を行っている段階であり、実験を実施することができていない。 次年度、本提案手法の有効性を示すことができれば、数値解析内容を発展させる必要があり、別の有限要素解析ソフトの導入も視野に入れる必要がある。また、本手法の有効性を示すことができない場合には、それに代わる方法として、AIによるディープラーニングを取り入れた逆解析のアプローチも考えられる。その場合には、そのソフトウェアの導入と比較的スペックの高い計算機が必要となる。 また、国際会議をはじめとする学会発表も積極的に行うことによって、手法を発展させるための情報収集や意見交換も重要である。
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Research Products
(1 results)