2022 Fiscal Year Research-status Report
微小疲労き裂における疲労き裂進展下限界有効応力拡大係数の実測
Project/Area Number |
22K03835
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西川 嗣彬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (20771843)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金属疲労 / 疲労亀裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
疲労亀裂の進展下限界特性が、学術的にも工学的に非常に重要な特性であることは言うまでもない。疲労亀裂が成長しない閾値を表す力学パラメータである「下限界応力拡大係数範囲 ΔKth」は、き裂長さによらず一定の値となるため、工学的に重要な材料特性として幅広く利用されている。しかしながら、ある閾値を超えて亀裂が短くなると、ΔKthは低下しはじめることが古くから知られている。これが、短い亀裂に破壊力学を適用すると危険側の予測を与える理由であり、多くの研究が行われてきた。 ΔKthは疲労亀裂の成長に伴う塑性変形の履歴による、"亀裂閉口"の影響を受けた特性であることから、本質的な材料の疲労き裂進展抵抗は、き裂閉口成分を除いた「下限界有効応力拡大係数範囲 ΔKeff threshold」であると考えられている。また、不思議なことに、材質に関係なく、ΔKeff thresholdは似たような値になることが、長い亀裂を対象にした多くのデータによって示されている。つまり、多くの研究者は、短い亀裂では、亀裂閉口の影響でΔKthが低下すると考えている。しかしながら、短い亀裂でΔKeff thresholdを実測した例は無く、本質的なΔKth低下の原因は曖昧なまま残されてきた。その理由は、ΔKeff thresholdを実測する方法が無かったことが一因である。 本研究の代表者は、マイクロスコープと画像相関法を組み合わせることで、ミクロな疲労亀裂で亀裂開閉口を実測する手法を確立してきた。本研究の目的は、この方法を活用し、短い亀裂におけるΔKeff thresholdを実測することで、その寸法依存性や硬さ依存性を明らかにすることである。これまでに、進展を停止したミクロな疲労亀裂のΔKeff thresholdの実測に成功しており、亀裂が短くなるにつれ低下する傾向があることが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、短い亀裂におけるΔKeff thresholdを実測することで、その寸法依存性、組織依存性や硬さ依存性を明らかにすることである。このために、初年度にΔKeff thresholdの実測方法を確立し、その寸法依存性を取得することを目標に研究を進めてきた。これまでに、50~500μmの4水準の人工欠陥を有する試験片を用意して、疲労限度におけるミクロな疲労亀裂のΔKeff thresholdの実測を完了した。これらの実験結果から、その寸法依存性の確認に成功している。したがって、研究は計画通り順調に進展しいていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにΔKeff thresholdの寸法依存性を確認することができた。残りの2ヵ年では、その硬さ依存性と金属組織依存性を調査する予定である。今年度は、熱処理により硬度を変化させたNi基合金を用意して、疲労限度におけるΔKeff thresholdを評価することで、短い亀裂におけるΔKeff thresholdの硬さ依存性を調べる予定である。
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