2022 Fiscal Year Research-status Report
Highly efficient machining of low carbon soft magnetic iron with cobalt-free FeAl binder carbide tools.
Project/Area Number |
22K03841
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
酒井 克彦 静岡大学, 工学部, 教授 (80262856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下島 康嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50262887)
静 弘生 静岡大学, 工学部, 准教授 (80552570)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 切削工具 / コバルトフリー / 純鉄系合金 / 工具摩耗 |
Outline of Annual Research Achievements |
純鉄系軟磁性材は代表的な低磁気損失材料であり,近年自動車用のソレノイドアクチュエータ部品用材料として多用されている.本合金の被削性については一般的な構造用炭素鋼と比較して切削工具への激しい溶着が生じることや,切りくず分断性が悪いこと,工具摩耗進行が早く工具寿命が著しく短いことなど切削加工を行う上での問題点が多い.本研究では純鉄系軟磁性材料の切削加工にコバルトレスFeAlバインダー超硬切削工具を適用することにより,現状の加工法と比較して工具寿命が長く低コストかつ高精度・高表面品質な仕上げ面を得る加工法の開発を行う.さらに純金属の切削加工における急速な境界摩耗進行のメカニズムについて工具バインダー材料の影響の観点から解析し,効果的な境界摩耗抑制方法の提案を行うことを研究目的とする.本研究ではこれまでの研究代表者および研究協力者のグループによる共同研究の結果を踏まえ,純鉄系軟磁性材料の切削加工にコバルトレスFeAlバインダー超硬工具を適用することによって,現状の加工法と比較して工具寿命が長く低コストかつ高精度,高表面品質な仕上げ面を得る加工法の開発を行うことを目的とする.本年度は純鉄系軟磁性材料の切削加工へのFeAlバインダー超硬工具への適用に関し,FeAlバインダーWC超硬工具よりもより高い耐溶着性が期待されるFeAlバインダーTiCN超硬材料から一般的な切削加工に適合するインサート工具を作成するとともに,外周旋削による長距離切削試験を用いた工具摩耗評価を実施し,一般的な市販Wc-Co超硬工具,サーメット工具との比較を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はパルス通電焼結によるFeAlバインダーTiCN超硬材料の生成からワイヤ放電加工による焼結素材の切り出し,工具切れ刃のホーニング処理を経て,市販旋削加工用バイト(CTGNR2020)に取付可能な形状のインサート工具製作を行った.切削加工における切削工具摩耗を定量的に評価するために,CNC旋盤(ヤマザキマザックQuickTurn 10N)を用いた長距離の外周旋削実験を実施し,一定切削距離毎の工具摩耗量測定を実施した.本研究では切削工具の逃げ面摩耗幅VBと境界摩耗幅VNの測定を行った.それぞれの摩耗は工具横逃げ面の光学顕微鏡観察により計測した.また本研究ではFeAlバインダーTiCN超硬材料から製作した切削工具の工具摩耗特性を比較するため,市販の K 種WC-Co超硬工具および,P種サーメット工具の工具摩耗試験を並行して実施した.外周旋削の切削条件は切削速度Vc=100および200m/min,切り込みa=0.5mm,工具送りf=0.1mm/revとした. 長距離切削試験に先立ち,各工具による外周旋削における切削抵抗を測定した.ここでは工作機械として普通旋盤(オークマLS)を用い,インサートの未使用のコーナー(表面3箇所と裏面3箇所の計6箇所から選択)を用いて約10 秒間切削を行い,切削動力計(Kistler9272),チャージアンプ(Kistler5070)を用いて切削抵抗を測定した.その後切削時間 30s 毎に工具摩耗量測定を行った.被削材は純鉄系合金JISSUY-1およびELCH2(神戸製鋼)を使用した.実験結果から切削抵抗はFeAlバインダーTiCN超硬工具が最も低いこと,切削速度100m/minでFeAlバインダーTiCN超硬工具とサーメット工具の逃げ面摩耗幅は同程度で,境界摩耗幅は前者が狭く摩耗進行が遅いこと等が明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した長距離切削試験による工具摩耗評価結果を踏まえ,今後は切削条件およびWC-FeAl超硬材料の成分・焼結条件の最適化を実施する.具体的にはバインダの原料組成および焼結条件,BNのような焼結錠剤添加量を調整して焼結材の硬さ,靭性,高温硬さなどのバランスが良好な切削工具に必要な機械的特性の獲得を目指す.また従来の光学顕微鏡による工具の摩耗形態観察に加えて,蛍光X線分析,XRD分析,EPMA分析によって工具表面の溶着物や反応生成物の同定を実施し,バインダー材料の違いによる生成物の差異について検討を行う.さらに純鉄系軟磁性材料の二次元切削実験を実施し,被削材と切削工具すくい面との間の摩擦係数やせん断面におけるせん断降伏応力の解析,ハイスピードカメラ撮影による切りくず生成と排出状況の観察を通じて,FeAlバインダーTiCN超硬工具と市販工具との切りくず生成メカニズムの差異や切削条件依存性について定量的評価を実施し,摩耗試験結果と合わせてWC-FeAl超硬工具による純鉄系軟磁性材料切削加工への適合性評価を行う.第3にバインダー材料と被削材との化学的親和性を評価するため,工具材料であるWC-FeAl超硬工具と被削材の純鉄系軟磁性材料との固相拡散実験等を実施し,バインダー材料による工具摩耗進行への影響を明らかにする.以上の通り生産工学に基づく切削工具としての諸特性評価結果を,材料工学に基づく材料開発に反映させてPDCAを行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度は研究遂行上必要な費用として計上した費目のうち,人件費・謝金にかかわる支出を行わず次年度以降に繰り越すこととした.FeAlバインダー焼結材料の合成には材料の定量・メカニカルアロイングによる混練,パルス通電焼結または真空焼結といった各工程に相当の熟練度が必要であり,次年度以降に雇用を予定する人員に各作業を習得・安定した焼結体の作成を行う予定である.
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