2022 Fiscal Year Research-status Report
生体軟組織の切断加工における組織の変形抑制に関する研究
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22K03843
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐竹 うらら 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70828409)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 軟質材料 / 切断加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
外科手術で頻繁に行われる生体軟組織の切断は,脳神経外科や心臓血管外科の手術においては手術の成否にも直接関わる重要な操作である.しかし,生体軟組織は非常に変形しやすいことから,切断の際,刃が押し込まれてから切断が開始するまでに押しつぶされて大きく変形し,挫滅や菲薄化といった致命的な問題が起こる.そのため,生体軟組織の切断では,いかに変形させずに切断するか,すなわち“切断の開始しやすさ”が重要な課題であるが,軟質材料を対象とした加工は加工学において大きく遅れた分野であり,切断加工に関しても加工理論が存在しない.本研究は,切断理論の基礎となる “切断の開始しやすさ”の決定機序を解明し,切断開始までの変形を抑制可能なメスを開発することを目的とする. 今年度は,まず,“切断の開始しやすさ”の決定機序を解明するうえで不可欠となる,刃先直下の引張応力に対する“切断対象表面の追従挙動”の影響の解明を目指した.これまでに,切断の開始をもたらす刃先直下の引張応力に対し,“切断対象表面の追従挙動”が強く相関することを見出しているが,その影響に関する詳細は不明であった.そこで,応力解析により,刃先周辺の応力分布における引張応力の大きさ,および刃先直下への集中程度に対する追従挙動の影響を明らかにした.また,その“切断対象表面の追従挙動”に対する切断条件の影響の解明を目指し,高速度カメラを用いて刃先近傍の追従挙動を実験的に評価可能な装置を構築した.そして,刃先形状,刃厚,刃の進入角度,切断対象に加える把持力といった各種切断条件下で追従挙動の評価を行い,追従挙動に対する切断条件の影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,軟質材料の切断加工において,“切断の開始しやすさ”の決定機序の解明にとって最も重要な項目となる「刃先周辺の応力分布に対して切断対象表面の追従挙動が及ぼす影響」および「切断対象表面の追従挙動に対して切断条件が及ぼす影響」を明らかにし,切断開始までの変形を抑制可能なメスの開発に向けた指針獲得を進めることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得られた知見にもとづき,実際に,切断開始までの変形を抑制可能なメスの開発を行う.具体的には,まず,“切断の開始しやすさ”の決定機序にもとづき,刃先直下の引張応力を効果的に高められる刃先形状を設計する.また,設計した刃を用いて切断を行った際にも,切断対象表面の刃先近傍の追従挙動を詳細に評価できるよう,今年度に構築した評価系を改良し,それを用いて設計した刃の効果を検証する.さらに,生体軟組織の切断においては,組織自体の変形のみならず「構造」としての変形も課題であることから,構築した理論を,「構造」としての変形の影響を考慮したものへと発展させ,組織自体の変形も「構造」としての変形もともに抑制可能なメスの開発指針を獲得する.
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