2023 Fiscal Year Research-status Report
バイレイヤ構造へのテクスチャ付与による変位拡大効果の解明とアクチュエータへの応用
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22K03884
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山口 大介 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (00735657)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アクチュエータ / ポリイミド / テクスチャ / フィルム / 熱駆動 / 溶着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究室ではこれまでに,熱膨張係数の異なるポリイミド(PI)フィルムを溶着する際に,特定の表面形状を加えることで,通常の熱膨張差を利用した変形と比較して約100倍の大変形が発生することを確認している.この変位拡大効果は実機試作を通して実現されているにとどまることから,本研究では,変位拡大効果のメカニズムを理解し,PIフィルム製大変形バイレイヤアクチュエータの設計技術獲得を最終目的としている.本変位拡大効果を利用したアクチュエータを,本研究ではテクスチャードアクチュエータと名付ける. 研究実施計画に従い,本年度は,テクスチャ形状(ストライプ形状)を変更したテクスチャードアクチュエータを試作・評価し,テクスチャ形状が出力特性に与える影響を確認した.少ない試作数で,設計パラメータと出力特性を紐付けた特性式を導出するために,実験計画法と重回帰分析を合わせた手法を確立した.アクチュエータの評価実験より,発生力と変位量の間にトレードオフの関係が見られ,これより加工処理によって見かけの剛性が低下し,変位拡大効果が起きている可能性を確認した.また変位量および最大発生力に強く影響する設計パラメータについて分析を行い,変位量または発生力にのみ大きく依存する項目と両者に関係するパラメータが存在することを確認した.加えて,重回帰式を求める事で,要求仕様(変位量・発生力)を有するアクチュエータを実現する設計パラメータの導出に成功し,試作を行った結果13%の誤差範囲内で設計・製作可能である事を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,当初計画に従ってアクチュエータの試作・評価,および変位拡大効果が生じる原因の特定を進めた.また実験計画法と重回帰分析を組み合わせる事で,要求仕様に沿ったアクチュエータの設計が可能となった.これにより,従来の設計・試作を繰り返すトライアンドエラーによる応用向けアクチュエータの製作から,目的に応じたアクチュエータの設計・製作が実現されると期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の設計方法の確立,昨年度の製作方法,評価装置の確立によって,アクチュエータの設計から評価までの一連の流れが完成した.今後,現在検討していない材料パラメータが駆動特性におよぼす影響について確認する.また,フィルム製造時の巻き取り癖がアクチュエータ製作における安定性に悪影響を及ぼしていることが確認された.そこで2枚のフィルムの溶着ではなく,PIフィルム上に直接PIフィルムを成膜することで,本アクチュエータの製作が可能か検討を進める.
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Causes of Carryover |
当初計画していたFEM用ワークステーションの購入について,本研究で確立した設計法によって安価なPCでも設計・分析可能となった.一方で,アクチュエータ材料であるPIフィルムロールの購入について,物価上昇に伴う単価の大幅な改訂が生じ,年度内の購入を断念した.本年度予算と次年度予算を合わせることでPIフィルムロールを購入し,試作実験を継続する.
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