2023 Fiscal Year Research-status Report
送り停止直後のゼロ切削状態に着目した工具-被削材間の摩擦特性の機上評価法
Project/Area Number |
22K03885
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 隆太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 特定教授 (60361979)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 摩擦係数 / 切削工具 / 切削油剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
すくい面摩擦係数を求めるにあたり,刃先丸みや逃げ面接触の影響を取り除くために切削抵抗の測定値からPloughing force を取り除く必要がある.それを求める際,外挿法はパラメータを広範囲で変化させる必要があること,切込みを漸増させる方法では切りくずが発生する瞬間の判断が難しいなどの課題が残る.また,切削抵抗へおよぼす切削油剤の効果は複雑であり,潤滑作用による減少効果が冷却作用による増加効果により相殺されに切削油剤の有無が切削抵抗やすくい面摩擦係数ほとんど影響しない場合も考えられる.よって,切削抵抗やすくい面摩擦係数の比較では,切削油剤がそれらへおよぼす影響は評価できても油剤そのものの摩擦特性の評価は難しい.そこで本研究では,正面フライス切削において主軸が回転した状態で送り運動が完全に停止した直後の切削抵抗をPloughing force とし,この値から逃げ面摩擦係数を算出するとともに,定常切削抵抗からPloughing force を除いた成分を用いて求めたすくい面摩擦係数との関係について調べた. チタン合金Ti-6Al-4Vを切削したときの逃げ面摩擦係数は, 乾式よりエマルションのミスト給油のときにわずかに低い.すくい面摩擦係数は乾式では切削速度が増加すると緩やかに減少した.ミスト給油では高速側でやや増加した. ニッケル基耐熱合金では,Alloy625と比べ耐熱性の優れたAlloy718 の方がPloughing force を除いた切削抵抗は全体的に高い. 逃げ面摩擦係数は,どちらの被削材でも切削速度の増加にともない減少し,乾式よりミスト給油の方が低い.すくい面摩擦係数は,Alloy625 では切削速度および切削油剤の有無でほとんど違いはなかった. Alloy718 では 乾式において切削速度とともに増加し, ミスト給油では低速側では増加するが高速になると減少した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
典型的な難削材であるチタン合金やニッケル基合金を切削したときの工具-被削材の摩擦特性値として逃げ面摩擦係数とすくい面摩擦係数を算出することができた,これらの値はその切削特性から考えると妥当と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
チタン合金やニッケル基耐熱合金のような高強度の被削材では,ミスト給油時においても送りが完全に停止するまで主軸が1回転する毎に安定した切削抵抗の出力が得られる.しかしながら,クロムモリブデン鋼やステンレス鋼などの典型的な難削材と比べると切削しやすいとされる被削材では,送りが完全に停止するまえに切削抵抗に占める振動成分が大きくなり抵抗の最小値が0を下回るようになる.この傾向はミスト給油のときに顕著に見られ,振動成分が0を下回るようになると逃げ面摩擦係数が急激に減少する.これは送りが減速を始めると切削点での発熱量が減少するために送りが一定のときと比べ工具と被削材の熱膨張が抑制されるために実際の切込み量が小さくなることが予想される.両者の弾性接触が十分でないと接触圧は低くなり界面へ切削油剤が侵入し易くなるため正確な評価ができない.したがって,ミスト給油時において逃げ面摩擦係数が急減するときの振動成分の割合を明らかにし,逃げ面摩擦係数を算出するときに用いる切削抵抗としてどの時点の波形を用いればよいかについて検討する.
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Causes of Carryover |
本年度は国際会議で発表できる水準に至らなかったので,次年度に発表と変更したため.
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Research Products
(4 results)