2022 Fiscal Year Research-status Report
反発硬さ試験法を利用した新しい材料特性評価手法の開発
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22K03886
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 健次 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40229480)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 反発硬さ試験 / 脆性材料 / 破壊 / 反発係数 / き裂 / ハンマ振動 / ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
材質および表面仕上げの観点から,繰返し入手性が良いと考えられる2種類の光学ウインドウ用ガラス(合成石英とN-BK7)を試験片として用いて実験を行った.ハンマには,これまでの金属試料に対する研究で,反発係数の落下高さ依存性の小さいことが確認されている角錐圧子を付与した高剛性ハンマ,すなわち,超硬合金製の軸部先端にダイヤモンド四角錐圧子を付与したものを用いた.四角錐圧子の対面角αは,136°, 160°, 172°の3種類であり,ハンマ質量はいずれも約39gである.これらのハンマを試験片表面から約0.1~4mmの高さから自由落下させ,この際の反発挙動をレーザドップラー振動計を用いて計測した. 両ガラスにおいて,圧子対面角が増加するにしたがい反発係数は増加し,落下高さが増加するにしたがい反発係数は若干低下する傾向が認められた.また,α=172°では両ガラス間の差は小さいが,対面角が小さくなるに従い差が増加し,α=136°ではN-BK7の反発係数は合成石英よりも0.1程度小さい値となった.圧痕を観察すると,同じ落下高さであってもN-BK7では合成石英よりも大きなき裂が発生しており、圧子対面角が小さくなるとき裂長さの差も拡大する傾向が認められた. ここで,α=136°における衝突時のハンマ加速度波形に注目すると,両ガラス間で興味深い相違が認められた.N-BK7の場合,最大加速度に達する前から顕著なハンマ振動が重畳した.数値解析を実施しハンマ先端に種々の衝突荷重の波形を与えたところ,負荷過程で衝突荷重を急激に低下させると同様なハンマ振動が生じることが明らかになった.すなわち,材種の違いによるき裂発生挙動違いが衝突荷重の波形に変化を生じさせ,それがハンマ振動と反発係数に変化をもたらせたと言える.これは,ハンマ反発挙動から材料の「破壊のし難さ」が評価できる可能性を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料の破壊現象とハンマ反発挙動が密接に関わっていることを間接的ではあるが確認することができた.また,圧子の対面角によってき裂の発生状況や材質間の相違にも変化が生じることが把握できた.剛性の高い超硬合金製ハンマに顕著な振動が衝突時に生じることは想定していなかったが,この振動現象を利用するとき裂の発生時期を特定できる可能性もあり,有力な評価因子になるものと期待している. 並行して,ハンマ反発挙動をこれまで以上に精確に捉えられる試験機の開発に取り組んだ.具体的には,ハンマを太さ約0.15mmの超高分子量ポリエチレン繊維製釣り糸3本で上下動可能なハンマステーから吊り下げ,ソレノイドの動作によって重力加速度より大きな下向きの加速度をハンマステーに与えることによりハンマを自由落下させるとともに,ばね力によりハンマを初期位置まで引き上げる構造である.このときのハンマの鉛直方向の速度をハンマ上部にレーザドップラー振動計レーザを照射することにより,さらに,ハンマ軸の左右に異なる高さで配置した2つの二次元レーザ変位計のレーザを照射することによって,ハンマの3次元的な挙動を捕えようとするものである.ハンマを吊り下げている糸の長さを調整することにより,鉛直軸に対してハンマが傾いた状態で衝突させることが可能である.試作した装置を用いて金属材料に対して検証を行った結果,圧痕形状から算出したハンマ傾斜角とレーザ変位計から導かれた値が精度よく一致すること,また,1回目の衝突以降もハンマが試料表面に繰返し衝突する現象を防ぐことできることを確認した.これは,圧痕が不明瞭であるガラス試料において,2回目以降の衝突による破壊を防ぐために極めて有用な機能となる.ただし,衝突後のハンマの回転および水平方向の速度計測に関しては十分な精度が得られていない.この原因はほぼ特定できており.対策を検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
ガラスの破壊現象がハンマ反発挙動に影響を与えることを定性的には明らかにすることができた.そこで次のステップとして,定量的にその影響メカニズムの解明に取り組む. 先の金属試料を用いた実験と同様に,ガラスを試験片とした場合においても,圧子対面角が増加すると反発係数は増加することが明らかとなった.ただし,ガラスの場合では圧子対面角が小さいほど破壊の程度は増加した.金属試料では,圧子対面角の変化による可逆的変形(弾性変形)と否可逆的変形(塑性変形)の割合の変化が反発係数に変化をもたらしているが,ガラスの場合,さらに破壊に費やされるエネルギの割合も変化していると考えられる.その寄与の程度を明確にするために,a)意図的にハンマを鉛直軸方向から傾斜させる,b)試験片表面を水平面から傾ける,の2つの場合を調査する.これによって,主として破壊に費やされるエネルギに変化が生じると予想している.また衝突後のハンマエネルギを精確に捉えるために,ハンマの3次元的挙動を把握する装置を完成させる. さらに,圧子対面角およびハンマ傾斜角によってき裂発生状況が異なる原因を,有限要素解析によって圧痕周囲の応力状態を把握するとともに,き裂発生状況と比較することによって明らかにする.これによって,き裂の発生条件が明らかにできれば,材種によるき裂発生状況の相違も説明可能になると期待される.さらに,有限要素法を用いて,試験片の破壊過程をも考慮したハンマ衝突解析を実施し,試験片の破壊強度がき裂発生およびハンマ振動と反発係数に及ぼす影響を系統的に調査することによって,「破壊のし難さ」が反発挙動に影響を及ぼすメカニズムを明らかにしたいと考えている. また並行して,ハンマ質量の異なるハンマを用いた実験を実施し,例えば衝突エネルギが同じで衝突速度が異なる場合を比較する等により,破壊現象への影響因子を明らかにしたい.
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Research Products
(2 results)