2022 Fiscal Year Research-status Report
Numerical Analysis on Thermal Control of Thermo-Bioconvection and Transport Characteristics Generated by Chemotactic Bacteria
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22K03918
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
柳岡 英樹 岩手大学, 理工学部, 教授 (40281951)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生物対流 / 熱対流 / バクテリア / 酸素 / 走化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,酸素に反応する走化性バクテリアに着目し,対流と物質輸送の強化のために,懸濁液に非定常的な温度変動を与えたときの熱生物対流の周波数応答性や共鳴現象が,バクテリアと酸素の輸送特性に及ぼす影響を三次元数値解析により明らかにし,対流と物質輸送の制御方法を提案することを目的とする. 容器に入った懸濁液中には酸素に反応し,熱に強い走化性バクテリアが存在している.水面から酸素が一様に供給されるため,バクテリアは酸素の豊富な水面方向へ移動する.空気を一様温度に保ち,下壁面を非定常的に加熱することにより,熱生物対流を発生させる.令和4年度では,熱生物対流の非定常特性と輸送特性を調査した.その結果,以下の知見が得られた. 1. 壁面と水面の温度差は熱対流のレーリー数に相当する.定常加熱の場合,生物対流を加熱させると,懸濁液の不安定性が強まり,対流速度が増加する.レーリー数が増加すると,バクテリアのプルームが形成されず,熱対流に特有のサーマルプルームが形成される.レーリー数が増加すると,生物対流が支配的な場から熱対流が支配的な場に懸濁液が変化することが明らかとなった.このとき,対流による物質の輸送が促進され,領域全体にわたってバクテリアと酸素の輸送特性が向上する. 2. 壁面の温度変動によって,非定常熱生物対流が発生する.低周波数では,温度変動に対して熱生物対流が追従し,熱対流と生物対流の干渉が強化されるため,領域全体のバクテリアと酸素の輸送特性が向上する.周波数が増加すると,温度変動に対する熱生物対流の追従性が悪化し,生物対流と熱対流の干渉が弱まるため,対流速度が遅くなり,バクテリアと酸素の輸送特性が低下する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究は,申請書の計画通りに進んでいる.最初に,定常加熱における熱生物対流の発生を確認し,壁面と水面の温度差を変化させたときの熱生物対流のパターンの変化を解明した.次に,温度変動の周波数と振幅を固定したときの非定常熱生物対流の発生を確認した.温度変動の周波数を変化させると,熱生物対流の追従性が変化することがわかった.また,定常加熱および非定常加熱による結果の比較により,熱生物対流中のバクテリアと酸素の輸送特性の相違を解明し,熱的振動の有効性を示すことができた.温度変動の周波数と振幅を広範囲に変化させていないので,次年度に詳細に調査する.したがって,現在までの進捗状況は順調に進展しているが,この時点では,論文としてまとめられる結果が蓄積されていないため,進捗状況は,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度では,熱生物対流と物質輸送の周波数応答性を調査する.最初に,加熱の変動周波数と振幅を固定し,バクテリアの初期濃度に様々な乱れを与え,波長が異なる生物対流パターンと,そのパターンの波長による輸送特性の変化を解明する.次に,バクテリア濃度を固定し,加熱の変動周波数や振幅を変化させたときのプルーム同士の干渉が,対流パターンや輸送特性に及ぼす影響を調査する.
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