2022 Fiscal Year Research-status Report
嗅動作時における鼻腔内遷移流れの直接数値シミュレーションと実験的検証
Project/Area Number |
22K03939
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20292667)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 直接数値シミュレーション / 鼻腔 / 嗅動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,医用画像に基づき複雑形状を再現した鼻腔内の嗅動作時における遷移流れを,格子を渦の最小スケールまで細分化した直接数値シミュレーション(DNS)により解析し,流れの不安定性を調査するものである.鼻腔狭窄部下流におけるジェットの形成と渦放出を空間・時間的に解像し,鼻腔の形状,流れ,および嗅覚機能との関係について明らかにするとともに,現在臨床応用が進められている鼻腔内流れの計算流体力学(CFD)解析のベンチマークとして有用なデータを提供する.また,シミュレーションと同形状・同流量条件のモデルを用いて流速変動とエアロゾル沈着の可視化計測実験を実施して,シミュレーション結果の妥当性を確認する. 本年度は,X線CT画像から3次元鼻腔モデルを構築して,実際の嗅動作時の流量波形を模擬した流動条件下で,鼻腔内遷移流れのDNSを実施した.DNSには,鼻腔前方の狭窄部(鼻弁部)の水力等価直径と平均流速から見積もられる乱れの最小スケールであるコルモゴロフ長さと同オーダーの直交格子を使用した.シミュレーションでは,嗅動作時の流量波形の実測値を境界条件として与えた. 結果より,鼻弁部下流で形成されるジェットと再循環流の間のせん断層において,渦の巻き上げ,伸張,崩壊を繰り返す渦放出の過程が確認された.また,局所的に乱れのパワースペクトルは広帯域の性質を帯び,乱流に典型的な-5/3の勾配を示すことが確認された.これらの乱れの特徴が,嗅動作時における急速な流れの加速・減速によりどのように影響を受けるかを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鼻腔内の嗅動作時における遷移流れのDNSを実施して,流れの不安定性を調査した.鼻腔狭窄部下流におけるジェットの形成と渦放出を空間・時間的に解像し,鼻腔内流れの計算流体力学解析のベンチマークとして有用なデータを取得することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーションと同じ形状の鼻腔モデル流路を3Dプリンターにより製作して,流動可視化実験を実施する.インバータポンプにより嗅動作を模擬した流量条件を再現して,粒子画像流速計により速度変動を計測する.速度変動より乱流運動エネルギーを算出し,エネルギースペクトルの空間・時間的変化を評価する.DNSと可視化実験を定量的に比較して,シミュレーションの妥当性を確認し,結果の有効性を検証する.
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