2023 Fiscal Year Research-status Report
熱力学サイクル反転型カルノーバッテリーの充放電特性解明
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22K03941
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
山田 昇 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90321976)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 蓄熱発電 / 発電サイクル / 冷凍サイクル / 熱電変換 / 熱交換器 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素化に向けて再生可能エネルギーによる発電電力を安価に貯蔵する技術が求められている。電力を熱に変換して蓄熱し、必要なときに電気に変換する蓄熱発電(カルノーバッテリー)は長寿命であり、低コスト蓄電を実現できる可能性がある。 本研究では、発電サイクルと冷凍サイクルを反転できる新規蓄熱発電システムの充放電特性と支配パラメータを解析と実験により解明し、実現可能性を明らかにする。 1年目は新規蓄熱発電システムのコンセプト実証を主たる目的として、発電・冷凍サイクル部に熱電変換モジュールを用いた蓄熱発電システムの基礎実験装置を組み立て、コンセプト通りに充放電動作ができることを実験により確認した。また、システムを等価熱回路に置き換えた解析モデルを構築し、実験装置の各部温度および熱流束等の動的挙動をほぼ再現することに成功した。 2年目は1年目に構築した解析モデルを用いて実験システムの設計・制御パラメータと充放電サイクル特性との関係を抽出した。いくつかのケーススタディにおいて損失メカニズムを分析を実施した結果、冷凍サイクル時に高温側から低温側に熱電変換モジュールを介して逆流する熱が損失の大部分となっていることが明らかとなった。また、本システムの稼働においては蓄放熱時の熱量と出力の向上が求められることから、高性能の潜熱蓄熱システムとして相変化材料(PCM)を一体化した新規構造熱交換器のミニモデルを試作し、その性能を実験により明らかにした。3重周期極小曲面で構成されるPCM熱交換器は従来のシェル&チューブ型熱交換器よりも圧力損失が少なく、伝熱特性に優れることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画した実施内容をほぼ完遂できたため、おおむね順調に進展していると判断している。とくに1年目に構築した解析モデルを用いて実験システムからの熱損失の要因を明らかにできたことは充放電効率のポテンシャル把握に必須のステップである。また、システムの性能向上に不可欠な要素である蓄熱システムについても新規の熱交換構造を見出し、その性能を実験で確認できたことも発展性のステップとして評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1~2年目の成果をベースとして、損失原因である熱電変換モジュールを逆流する熱流の低減方策を検討する。解析モデルを用いて幾つかのアイデアの有効性を検証し、熱電素子を用いたカルノーバッテリーの実現可能性をまとめる。また、蓄熱システムについてさらなる構造の最適化と蓄放熱実験を実施し、カルノーバッテリーシステムへの適用可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験装置の構築にあたり研究室に既有の物品を一部流用できたこと、論文校正費等を大学から支援されたことなどにより、当初の予定よりも使用額が減ったため。翌年度分として請求した助成金と合わせて、より拡張性と計測精度の高い実験系の構築、学会旅費、謝金等に使用する予定である。
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