2023 Fiscal Year Research-status Report
プラスチック流路内で誘起される自励振動式熱輸送現象のメカニズム解明と理論構築
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22K03947
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小糸 康志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70347003)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自励振動式ヒートパイプ / ポリマーヒートパイプ / フローパターン / 伝熱促進 / 気液分布 / 設計式 / 重力 / ハイドロフルオロエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度,プラスチック系自励振動式ヒートパイプ内において,液スラグ同士,蒸気プラグ同士の合体が起きたことから,本年度はまず,ヒートパイプの流路サイズと液スラグ・蒸気プラグの気液分布との関係について検討した.具体的には,1.0mm(幅)×0.6mm(高さ),1.0mm×0.7mm,1.0mm×1.0mmの流路を製作し,流路内に液スラグ・蒸気プラグの状態で作動流体を分散させ,流路を鉛直向きに設置してその後の気液分布の変化を確認した.作動流体にはハイドロフルオロエーテルを用いた.自励振動式ヒートパイプに関する従来の設計式に基づくと,上記のサイズの流路内では液スラグ・蒸気プラグの分散状態が維持されるが,本実験ではいずれのサイズの流路の場合も液スラグ同士,蒸気プラグ同士が合体し,気液分布が従来の設計式に従わないことが確認された. 次に,ヒートパイプの作動特性に及ぼす重力の影響を確認するため,ヒートパイプの設置姿勢を変化させて,初年度と同様に可視化実験と映像解析を行った.前年度,ヒートパイプを水平に設置して実験を行ったことから,本年度はヒートパイプの設置姿勢を水平から鉛直方向に45度,90度と変化させ,ボトムヒートモードで実験を行った.実験結果から,重力の影響を受けると作動流体のフローパターンが大きく異なり,加熱量が小さいときには液スラグと蒸気プラグがランダムに振動する振動流,加熱量が大きくなると液スラグと蒸気プラグが振動しながら一方向に流れる循環流へとフローパターンが変化することが確認された.さらに,重力の影響を受けるとヒートパイプの熱輸送も促進され,ヒートパイプ全体の熱抵抗の最小値で比較すると,水平姿勢から45度の姿勢に変化させることによって36%,90度の姿勢に変化させることによって48%の抵抗低減が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,自励振動式ヒートパイプの設計式について具体的な検討を進めることができ,さらに,ヒートパイプの作動特性に及ぼす重力の影響を明らかにすることができた.このことから,当初計画を踏まえた上で「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒートパイプの理論モデルを構築して実験結果を理解することにより,プラスチック系自励振動式ヒートパイプとメタル系自励振動式ヒートパイプの熱輸送メカニズムの違いに迫る.具体的には,液スラグの動きに着目して運動方程式を立て,蒸気プラグと伝熱との関係を定式化することにより理論モデルを構築する.ヒートパイプの設計条件,使用条件を変化させて理論解析を進める計画である.その上で,プラスチック系とメタル系の自励振動式ヒートパイプの熱輸送メカニズムの違いを整理し,プラスチックを対象とした自励振動式ヒートパイプの設計式を構築する計画である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は研究の進捗状況を踏まえ,消耗品費と旅費の一部の執行を令和5年度から令和6年度に変更したために生じたものである.次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせ,消耗品費ならびに旅費として令和6年度に使用する.
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