2023 Fiscal Year Research-status Report
衣服内気候を人の快適な空間とする高分子収着剤繊維不織布による温湿度制御技術の開発
Project/Area Number |
22K03951
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
春木 直人 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (10311797)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子収着剤 / 衣服内気候 / 温湿度制御 / 吸着発熱反応 / 自然対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来の吸湿発熱繊維よりも水分吸着特性に優れ,低温での再生(脱着)も可能な有機高分子系の高性能吸放湿材料空調用素材である高分子収着剤を衣服の新たな吸湿発熱繊維として使用することで衣服内気候の温度と湿度を制御して,人体にとって快適な衣服内気候を実現する技術の開発を行うものである.特に,人体の不快感の主要因である発汗等で生じた水分による衣服内気候の湿度制御のため,衣服内気候内の気流(外部からの流入,体温による自然対流)と組み合わせることで不織布を着用しながらの衣服内気候の温湿度の制御を目指している. この研究目的の実現のため,本研究期間にて明らかにするべき項目は,①本研究に適した新たな高分子収着剤繊維不織布の作製と性能確認,②発汗による湿度と,外部から温湿度が制御された空気の流入出ができる実験装置の準備,③様々な状態(温度,湿度,気流)とした衣服内気候に設置した新たな高分子収着剤繊維不織布の収着発熱特性の確認と衣服内気候の温度・湿度の制御技術の確立である. 令和5年度には,主に項目②に関連した新たな実験装置の作成が令和4年度の精密空調機の購入によって完了したので,その装置を用いて,まず高分子収着剤繊維不織布を設置した衣服内気候の温湿度を,外部の温湿度がより厳密に制御された状態で測定が出来ることを確認した.そして項目③に関連して,実際の衣服着用時での湿度制御(水分移動)を想定して,高分子収着剤繊維不織布との収着反応(水分移動)が,衣服内気候だけではなく,外部空気とも同時に作用する状態での温湿度制御の測定を実施し,その特性を明らかにした.また,空気の湿度測定をより正確に実施するために,新たに露点計の購入を行った.さらに,それまでの研究成果を学会にて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間内で明らかにするべき項目の内,項目②「発汗による湿度と,外部から温湿度が制御された空気の流入出ができる実験装置の準備」が令和4年度の精密空調機の購入として終了していた.そのため,令和5年度では,項目③のうち「様々な状態(温度,湿度,気流)とした衣服内気候に設置した新たな高分子収着剤繊維不織布の収着発熱特性の確認」に関する実験として,実際の衣服着用時の状況を想定し,高分子収着剤繊維不織布が衣服内気候だけでなく外部空気との両方の間で水分移動して湿度制御した場合での温湿度の測定を行い,その特性を明らかにすることができた.さらに,項目①についても,新たな実験装置を用いて従来の高分子収着剤繊維不織布の特性を正確に把握することができ,不織布開発のための基礎データを得ることが出来た.以上の実験進行状況により,(2)おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度では,まず,令和4年度に納入された精密空調機器が既設の実験装置に設置された実験装置を用いて,厳密に温湿度が制御された外部空気の環境下にて,従来の高分子収着剤繊維不織布が設置された衣服内気候と外部空気からの水分移動による衣服内気候の温湿度制御実験において,これまで十分に検討できていなかった人体からの発汗を想定し,衣服内気候への水分供給がある実験条件での測定を行う予定である. また,これまでの実験成果をまとめて,国際会議(ACTS2024)にて,報告を行う予定である.
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Causes of Carryover |
令和5年度での本研究費は,主に空気の湿度を正確に測定するための露点計の購入と,不足していた従来の高分子収着剤繊維不織布の購入に使用された.さらに,本実験に関する研究成果を,本実験の実施担当である学生が学会にて発表するための旅費の支出を行った.その上で,研究成果全体の内容を令和6年度に中国で開催される国際学会で報告を行うにあたり,その国際学会への参加費と渡航費がある程度必要となったため,令和5年度予算で残った経費をその国際学会参加に割り当てることとしたため,次年度使用額が生じた. 使用計画としては,この次年度使用額は,基本的には国際学会参加の諸経費に割り当てるとともに,高分子収着剤繊維不織布の作成費に充てる予定である.また,令和4年度に購入した精密空調機器の稼働には精製水費が必要であるため,消耗品費として購入する予定である.
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