2022 Fiscal Year Research-status Report
多孔質の機能を活用した高速応答パッシブ水素生成器の開発
Project/Area Number |
22K03962
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥山 邦人 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60204153)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱工学 / 多孔質粒子層 / 水素生成 / 液体燃料 / パッシブプロセス / 応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒を担持した多孔質粒子の充填層反応管の下端をメタノール液に浸して含侵させ、管表面から加熱すると、蒸発域(気液二相域)の毛管作用と乾燥した昇温域における触媒反応により水素を含むガスが発生するようになり, 化学再生によるエネルギー変換プロセスの高効率化などに資する。しかしこのようなプロセスでは、一般の乾燥工程からも類推されるように、蒸発により局所の液体含有率や乾燥領域が層内で刻々と変化し、安定した流動・反応状態に達するのに長い時間を要するため、熱負荷への応答性が悪く、プロセス効率が低下してしまうといった問題がある。本研究はこのようなパッシブ型反応器について実験及び理論解析を行い、プロセス効率を低下させることなく迅速な応答性を得るための設計の指針を構築することを目的とする。 応答性向上の方法として、(a)反応管軸に沿って形成する、液体予熱域、蒸発域、反応域(乾燥域)が予め規定された長さとなる(領域発達過程の時間遅れがなくなる)ようにする方法、(b)蒸発域の充填層と管壁間に隙間を設け、蒸発が充填層の表面のみで起こる(蒸発の時間遅れがなくなる)ようにする方法、具体的には粒径による特性(毛管力及び透過係数)の異なる多孔質粒子や隙間を管内に幾何学配置することで気液流と熱流を受動的に制御する方法が考えられる。本研究では、層内温度分布から各領域の成長過程を、また蒸気と反応生成ガスの生成速度の時間変化から流動の発達過程を実験的に調べ、単一径粒子の充填層からなる系と比較検討した。その結果、管軸方向の応答性は大きく改善されたが、二相域では層内全域が飽和温度に達するまで蒸気は流出せず、想定した迅速応答性を得ることはできなかった。この原因については多孔質内特有の二相流現象に基づいて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の(a)の方法に関して、液体予熱域と蒸発域(気液二相域)には毛管力が大きい小径多孔質粒子、反応域(乾燥域)には毛管力の小さい大径多孔質粒子を充填し(複合粒子層の構成)、蒸発域と反応域の間に金網状のスペーサーを挿入することにより、予め反応域まで毛管力により液体が浸入しないようにすることに成功した。この結果、単一径粒子充填層の場合には、加熱により乾燥域が軸方向に拡大していく過程がなくなり、応答時間は約1/10まで減少した。また単一径粒子層では加熱量の増加とともに蒸発域長さが減少し、そのため蒸気生成速度が減少していく傾向があったが、複合粒子層では蒸気生成速度は加熱量に比例して増加し、制御性の良さも確認された。 一方(b)の方法に関しては、蒸発域における充填層と管壁間に金網を挿入することにより、管壁と充填層の間に隙間を設け、壁面からの加熱による蒸発が充填層の表面(側面)のみで起こるようにすることを試みたが、蒸気生成の遅れ時間は主に加熱開始前の充填層の温度によっていて、飽和温度より低いほど加熱開始後の蒸気生成開始までの遅れ時間が生じてしまう結果となった。しかし、隙間を設けない場合と比べ、蒸気生成量が大幅に増加しており、蒸発域の充填層からの生成蒸気の排出は改善されていることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験的検討から、液体予熱域、蒸発域(気液二相域)、反応域(乾燥域)にそれぞれ即した粒径の多孔質粒子を充填する複合粒子層の構成をすることにより、蒸発域から反応域への毛管力による液浸透が抑止され、反応域の乾燥過程による応答性の遅れの問題が解消され、反応器としての応答性が大幅に向上するとともに、加熱量に比例した蒸気生成が得られるなど蒸気生成特性の改善にもつながることがわかった。一方、蒸発域については、加熱流と気液流が管壁との間に隙間を設けた充填層表面で受動的対向流になり、充填層内部の液体の温度や分布の影響を受けることなく加熱量に比例した蒸気生成量を迅速に得ることができることを期待したが、充填層が飽和温度に上昇するまで蒸気の生成は見られなかった。隙間からの蒸気排出における流動抵抗が十分低く保たれず、生成蒸気が充填層内にも流れ込んだことが考えられる。 令和5年度は、蒸発域について、充填層と管壁との間の隙間材料(金網のメッシュ、厚さなど)を変化させ、熱流と気液流が対向流となる条件、またその際の応答性について実験的に調べるとともに、研究代表者がこれまで開発した多孔質内の気液二相流数値解析モデルを発展させた理論解析を行い、応答性を律速する要因とパラメータを明らかにする。令和6年度は、開発した二相流解析モデルを反応器モデルに組み込むことにより反応器全体の熱流動解析を行い、反応器の応答性と反応プロセス効率やエネルギー利用効率に与える多孔質特性の影響、複合多孔質層の有効性について具体的条件などを明らかにする。得られた結果をもとに、高い応答性を有する多孔質層活用パッシブ水素生成器を設計するための指針を得る。
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