2023 Fiscal Year Research-status Report
幾何学的整合性を保証する物理モデルと固有直交分解を併用したパラメータ推定法の構築
Project/Area Number |
22K03979
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
原 謙介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70508259)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パラメータ推定 / マルチボディシステム / 随伴法 / 固有直交分解 / 微分代数方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
構築する手法を剛体から柔軟体を対象としたマルチボディシステムに発展させることを中心に取り組んだ.まず,モデルに関しては,剛体/柔軟体に関わらず,回転運動の数値積分上の取り扱いが重要になるため,回転運動の数値計算を効率的・安定的に行うための方法について慎重に検討を行った.特に,継続的に取り組んでいる回転運動の時間増分量に着目して定式化したモデルについて,一般化されたオイラーパラメータを組み合わせた数値積分法の構築を行った.本研究で使用しているパラメータ推定法は,時系列データを取得するための数値積分に多くの計算時間を費やすため,このような計算時間短縮は重要である.また,時系列データに固有直交分解を適用することで得られる固有直交モード(PODモード)によって抽出した成分,特に比較的高次のPODモードに推定精度が高いものが存在する結果の物理的考察を進めるため,支持部に不確かさ(線形ばね)を設定した多自由度質点系と柔軟はりのモデルについて,PODモードで分解した時系列データの周波数分析を行った.その結果,高次のPODモードに含まれる振動数成分は,不確かさのない場合の固有振動モードの振動数に近い値を多く含む傾向があることが分かってきた.しかしながら,現時点では不確かさとしている支持部の剛性係数に関するパラメータの設定範囲が十分ではないため,調査範囲を広げて引き続き検討を行う必要がある.また,数値解析による参照データの分析結果より,パラメータ推定で使用したいPODモードの成分が当初の想定よりも高次かつ寄与度の低い(振幅が小さい)可能性が出てきたため,実験データの計測方法について再検討が必要となることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
柔軟マルチボディシステムへの応用を想定して,時間増分量に着目した回転運動の記述法と浮動基準枠法に基づいたモデルの構築を行った.想定していたモデル・手法の導入は概ね予定通り進んでいるが,柔軟体のモデルに関して,特に要素数が少ない場合に参照データとして使用する時系列解析の精度が予想よりも低くなるケースが見受けられた.後述の通り,比較的高い振動数成分に着目して参照データを設定するパラメータ推定手法となるため,より少ない要素数で良好な参照データを取得可能なモデルに修正することも検討している. 次に,一部のPODモードが高い推定精度を示す点の物理的裏付けを行うために支持部に不確かさを持つ多自由度質点系と柔軟はりを対象として検証を行った.その結果,PODモードに分解した成分の周波数分析結果と不確かさを含まない系の固有振動モードの値の比較から,高い推定精度を示すものを判別できる可能性が見えてきた.一方,不確かさとして設定した支持部の剛性係数のパラメータ設定範囲が十分でないため,より多くのケースを想定して引き続き検討を行う必要がある. 実験装置の製作に関しては,上記の概要内で述べた通り,パラメータ推定で使用したいPODモードの成分を計測するために必要な時間的・空間的分解能が想定よりも高くなることが分かってきたため,計測システムを中心に修正を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
柔軟マルチボディシステムを想定したモデルに関して,推定に使用する参照データ取得のための時系列解析の精度改善を行う.具体的には,浮動基準枠法に加えて絶対節点座標法等のモデルについても検討を行う.なお,ここで言う精度は,推定に使用するデータサンプルに対してのものであり,パラメータ推定法そのものに対して大きな修正を行うわけではない.しかしながら,本研究で構築している推定手法は,変位が小さく,振動数も高い成分を抽出して推定を行うことから,高精度なサンプルデータを短時間で取得できることは,手法の妥当性検証や作業の効率化のために重要となる.次に,不確かさとして設定している支持部の剛性係数に関するパラメータの設定範囲を広げ,高い精度が得られるPODモードの特徴について分析を進める.特に,上記のようなモデル改善を行うことで,数値積分上の理由により参照データを取ることが難しい支持部の剛性が高い場合の分析が進むことが期待される. また,実験装置に関しては,推定精度が高いことが予測されるPODモードの振動成分を精査した上で必要とされる計測精度を求め,その結果から計測システムの仕様について検討する.
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Causes of Carryover |
一部のPODモードが高い推定精度を示す点の物理的裏付けを行うため,端部を剛性支持としたものを対象として調査を行ったが,必要な剛性係数のパラメータ設定範囲については検討中となっている.特に,パラメータ推定で使用したいPODモードの成分が当初の想定よりも高次かつ寄与度の低い(振幅が小さい)可能性が出てきたため,実験データの計測方法について再検討を行っている.これにより,計測システムの構成の見直しを行ったことが次年度使用額が生じた理由である.この未使用分については,解析によって上述の高い推定精度を示すものが存在する理由の裏付けを進めた上で再構成した計測システムの導入に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)