2023 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental study of an instantaneous adaptive point-like-scatterers-arrayed transcranial acoustic lens
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22K03987
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
植田 毅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30251185)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Phononic lens / Point-like scatterers / Ultrasonic wave / Cerebral infarction / Arrangement optimization / Diffraction optics / Alzheimer's disease / Brain stimulation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では点状散乱体の配置を最適化して形成した経頭蓋音響レンズを提案している。散乱体の最適な配置は、音場が焦点を除いて頭蓋骨内で消失し、焦点で周囲の領域よりも高くなるように決定した。このレンズは、入射平面波を焦点において入射方向に垂直な(横)方向には回折限界まで集束させることを実現した。しかし、焦点のスポットの伝播方向の幅は横方向の幅の5倍以上になる。 2023年度ではそれを現実的方法で改善するために、点状の散乱体を頭部を部分的に覆うように配置し、さらに層数を増やすことを提案し、その特性を調べた。頭蓋骨の形状はCTデータに基づいてモデル化し、以前の論文よりも現実的なパラメータが使用した。この成果は、国際会議ICMAT2023およびAIP Advances 14, 025339 (2024)に発表した。 アルツハイマー病は従来、神経系の病気と考えられてきたが、近年、脳の毛細血管にアミロイドβが沈着することによる動脈硬化が原因であり、微弱な超音波で脳血管を刺激するとアミロイドβが排出されることが明らかになっている。 東北大学の研究グループは、間もなく、その方法による治療の第3相臨床試験に入ろうとしている。 しかし、他用途の既存の超音波デバイスが脳刺激に使用され、刺激は決して最適化されていない。 そこで、本研究課題の経頭蓋レンズの点状散乱体の配置を、入射した平面波が脳内で均一な強度になるように変更することにより最適な配置を決定した。この成果は第36回計算力学講演会において発表し、また、国際会議WCCM2024において発表予定である さらに、これまでの2次元モデルをMathematicaを用いて数値計算していたが、2023年度では、3次元モデルでの数値計算を計画していた。計画通り、3次元モデルを高速処理できるコンパイラ型言語を用いた数値計算プログラムをコーディングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究方針では、これまで扱ってきた2次元モデルを3次元化し、Mathematicaより高速に実行できるコンパイラ型プログラミング言語への翻訳をプログラミング補助者を雇用し行う予定であった。しかしながら、適当なMathematicaおよびFORTRAN言語の知識を持ち、翻訳を行える補助者をもつけることが困難であり、遅れていたが、2023年度に研究代表者本人が全てを行った。3次元系での数値計算の実行は2024年度の課題であるが、計画通り進捗していると言える。 更に、本研究課題で提案している超音波レンズはフレネル型レンズであるが、その宿命というべき伝播方向への集束幅の広さを克服する方法が2022年度に見いだされ、2023年度に論文にまとめて公開した。 また、本計画では脳血栓を有効に溶かすことを目的として超音波レンズの設計を行っていたが、別の用途として、アルツハイマー病の改善のために脳全体を超音波で刺激する方法への応用について調べた。 これらは当初の計画にはなかったが、本研究課題の派生応用として本研究の有用性を示しており、研究課題の順調な進捗を示していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では、微弱な超音波で脳血管を刺激しアミロイドβが排出し、アルツハイマー病を改善する最適な装置の開発のために、経頭蓋で脳内を一様に刺激できるレンズについての研究成果を国際会議WCCM2024において発表予定である。 また、3次元モデルの精密化を行い、様々なパラメーターでの数計算を行い、点状散乱体配置超音波レンズの3次元での特性を調べ、12月の計算数理工学シンポジウムのでの発表を計画している。
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Causes of Carryover |
点状散乱体配置経頭蓋超音波レンズを3次元化し、配置の最適化の集束性、最適配置での入射平面波の集束特性を数値解析する予定であった。2次元モデルではMathematicaを用いて数値計算を行っていたが、3次元では計算を高速化するためにFORTRANへの翻訳をする予定であり、そのための補助員を雇用する予定であったが、適当な自分物が見つからず、研究代表者が自ら行ったため、その経費が必要なくなった。また、FORTRANによる3次元モデルの計算するために高速演算サーバーを導入予定であったが、計算機の高性能化によりその差額が生じた。2024年度にはバンクーバーで開催される国際会議に参加する予定であり、円安の影響、航空機運賃、ホテル代の高騰もあり、参加費用がかさむため、これらの差額を2024年度に残すこととした。
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