2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔系・喉頭系の実体モデルとしての剛柔混成機構系による機械式発話ロボットの開発
Project/Area Number |
22K03988
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
遠藤 信綱 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (30535844)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソフトロボティクス / 発話ロボット / 舌 / 声帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
柔軟舌機構のための(A) ワイヤ駆動による柔軟物伸長機構として,前年度までに,五節剛体リンク機構による伸縮運動と,柔軟物の局所部分の曲げ剛性を小さくすることに着想を得た,五節柔軟リンク機構(A-a)を開発している.本年度は,この機構の変形についてモデリングした.具体的には,閉ループを持つ剛体リンク機構系に関する力のつりあいと幾何学的な拘束から立式する力学モデルに対し,この機構を実際に構成する柔軟リンク部分および閉ループ内部の柔軟部材の弾性変形を考慮した力学モデルを組み込んだ,変形モデルを立式した.実際に使用している柔軟材料の引張試験から算出した弾性係数を用い,この変形モデルが実際の機構の変形の挙動をよく再現できることを確認した.また,当初計画には無かったが,磁気応答性柔軟材料および電磁石による磁力で変形を制御する機構も開発した. 柔軟機構の変形をセンシングするために,光ファイバに基づく柔軟センサを製作し,機械学習手法を用いた変形状態(伸縮,曲げ,押込み)の推定を行った. 声帯機構として,前年度までに,異なる柔らかさの柔軟樹脂を段階的に一部品に成形することで,ヒト同様の二層構造声帯襞を持つ声帯機構を製作し,ヒト成人男性と同程度の基本周波数の発声が可能であることを確認している.本年度は,これの発声する基本周波数を調整可能な,ヒト喉頭系の解剖学的構造を模した声帯駆動機構を開発した.具体的には,声帯襞前面部を前方に引っ張り下げる甲状軟骨の運動を模した機構と,声帯襞後方部を開閉させる披裂軟骨の運動を模した機構である.また,サイズおよび硬さの異なる声帯機構を複数種製作し,これらの発声実験を行い,音声学で一般的に知られている声帯襞1質点モデルによる挙動の実証実験を行った. 柔軟舌機構および声帯機構の一部について,ここまでの成果を学術誌論文として投稿できるように準備しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
柔軟舌機構および声帯機構について,学術誌論文として投稿できる程度の一連の研究成果が得られたので,十分な進捗といえる.ただし,柔軟物の変形形状のセンシングについては,若干の遅れがみられる.
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Strategy for Future Research Activity |
柔軟舌機構について,これまでに,(B) 柔軟物のソフトチューブ埋込式ワイヤ駆動機構として2種の機構(2本のワイヤを並列配置した機構と,それをさらに直列化した機構),(A) ワイヤ駆動による柔軟物伸長機構として2種の機構(柔軟リンク機構と,(B)にフレキシブルチューブを組み込んだ機構),そして,磁気応答性柔軟材料を用いた機構1種の,計5種を開発してきた.今後は,これらの機構方式を利点欠点を整理したうえで取捨選択し,柔軟舌機構としてまとめ上げる. 声帯機構について,さらに声帯襞を構成する声帯筋の緊張・弛緩を機構的に再現し,解剖学的知見に基づく人工声帯機構としてまとめ上げる.また,声帯振動の音声数理モデルの実証実験を行う.
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Causes of Carryover |
研究の進捗により学会発表や論文投稿を行わなかったため,次年度使用額が生じた.次年度の物品費購入もしくは学会発表・論文投稿費用に充てられる.
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