2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and proof of a 4 K cryocooler that achieves both low power consumption and high efficiency
Project/Area Number |
22K04058
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Research Institution | National Institute of Technology(KOSEN), Oshima College |
Principal Investigator |
増山 新二 大島商船高等専門学校, 電子機械工学科, 教授 (00287591)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 低消費電力 / 4 K小型冷凍機 / 低速動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超電導機器などの低温システムに必須な道具である極低温 (4 K) 小型冷凍機の低消費電力・高効率の両立を目指し,電気エネルギーの利用効率を高めることを目的とする。目的を達成するため,小型冷凍機の主要構成要素の最適化を図るとともに,その心臓部の一部である「蓄冷器」部に,独自開発している構造や材料を適用させる。本研究成果より,(1) 小型冷凍機の低消費電力化 --> 電気エネルギー利用効率向上,応用分野の拡大,(2) 小型冷凍機の最適化 --> 高効率冷凍機実現への設計指針,の二項目を達成する。これらは超電導機器の応用の拡大,極低温における理工学エネルギー分野のさらなる発展へつながると考えられる。なお,本研究の対象温度は,ヘリウム液化温度の4.2 Kである。研究課題の達成は,近年大きな問題となっているヘリウム不足を補う効果も含まれており,本研究の実施意義は大きい。 本研究で定義している「低消費電力」とは,冷凍機を駆動するための電気入力 (ヘリウム圧縮機で95%以上消費される) が2 kWレベル以下としている。この意味は,三相200 Vを使用する場合,必要な電流が10 A以下となる。したがって,大規模な電力設備を必要としないため,多くのユーザが手軽に利用することができる。また,「高効率」の意味は,冷凍機の熱力学効率であるパーセントカルノー (%カルノー) において,2%以上 (通常の4 K冷凍機は1%レベル) を目指すことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,大きさが異なる3台の2段型冷凍機 (膨張部と蓄冷器部,以下,コールドヘッドと呼ぶ) に2 kWクラスの圧縮機をそれぞれ接続して動作させ,実験的に4.2 Kの冷凍能力の評価を行った (以下,コールドヘッドの大きさから,S, M, Lのクラス分けで呼ぶ)。本コールドヘッドは,二つの冷却ステージを持ち,2段目が約50~4 Kの温度範囲を担当している。4 Kレベルの冷却性能に大きな影響を及ぼすのは2段目蓄冷器であり,特に内部に充填される球状蓄冷材(高温側からPb, HoCu2, Gd2OS2球が,われわれ独自の充填割合で充填されてある)と,それと熱交換を行う高圧ヘリウムガスとの振る舞いが重要である。また,冷凍サイクルを構築する上では,圧縮機が吐出するヘリウムガス質量流量 (以下,圧縮機流量とする) と,膨張空間へ出入りするヘリウムガス質量流量 (以下,膨張流量とする) のバランスも重要となる。一般的には,両者はほぼ同様な大きさを持つ。 本研究で準備した3台のコールドヘッドは,いずれも膨張流量が圧縮機流量よりもとても大きいため,通常の運転条件では,4.2 Kでの冷凍能力はほぼ発揮されないと予測できる。そこで,コールドヘッド内のディスプレーサの動作速度が通常は60または72 rpmで固定されているのに対し,それを新たに設けたインバータで低速動作させることで,1サイクル当たりの膨張流量を見かけ上増やす方法を取り入れた。実験結果から,3台のコールドヘッドとも36 rpmのときに,4.2 Kの冷凍能力がもっとも大きな値を示した。その大きさは,S→M→Lの順番でコールドヘッドサイズの大きさに依存した。Lサイズの冷凍能力の最大値は0.95 W,このときの%カルノーは3.5%であると計算された。これは2 kWクラスの圧縮機で動作する4 K冷凍機の世界最高値である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,実験的に大きさの異なる3台のコールドヘッドと2 kWクラスの圧縮機との組み合わせを調査した。2段目蓄冷材の充填量比は,Mサイズを1.0としたとき,Sサイズ0.35,Lサイズ1.3である。実験結果から,蓄冷材充填量が多いほど4.2 Kでの冷凍能力が大きくなった。そこで今後は,2段目蓄冷器の圧力損失,蓄冷器効率などの蓄冷器性能が,低速度動作することで,従来の動作速度とどのような違いが生じているのかを数値解析から明らかにすることを目指す。さらに,一般的な7 kWクラス圧縮機を使用した時の蓄冷器性能とも比較する。以上の結果ら,低消費電力で駆動する4 K冷凍機の2段目蓄冷器の最適な大きさを見出したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度,冷凍機の冷媒に使用している高純度ヘリウムガスを消耗品として計上していたが,その消費が当初の予定より少なかったため残金が生じた。
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