2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K04059
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 達司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60392677)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 広帯域分圧器 / 電力標準 / 位相誤差 / 比誤差 / 抵抗分圧器 / 誤差補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
広帯域抵抗分圧器の開発では、チップ化された金属箔抵抗器のうち、浮遊キャパシタンスが0.5 pF以下でかつ温度係数がppm以下のものを選定し、その全てのチップ抵抗器に対してLCRメータを使用した最適な手法を用いて、高精度なインピーダンス計測し、この結果を用いて、直列抵抗部と並列抵抗部にそれぞれ使用するチップ抵抗の最適選定を拡張ハーモン理論を導入することで決定した。また抵抗分圧器内の電界分布を均一化させ、チップーケース間の浮遊容量分布を簡素化するための電界シールド形状をシミュレーション解析で決定したことにより、拡張ハーモン理論を忠実に再現することが可能となり、理論上ではppmレベルの高精度な広帯域抵抗分圧器の開発を実現できた。 分圧誤差評価システムの開発では、以前のシステムで問題となっていた数100 kHz以上での位相制御の不安定性に対して検討を行い、位相標準器と呼ばれる、位相特性に優れた2チャンネル信号発生器の導入を行うことで、位相不安定問題を解消するとともに、位相標準器の校正値を利用して、より優れた位相制御を可能とした。これにより、MHz帯での位相誤差評価に対して飛躍的な向上が見られた。また、今回の評価システムでは、位相標準器を導入したことにより、2出力の電圧精度が低下することを考慮し、システム全体の誤差を補正するための誤差補正方法についても新たな方法として考案し、より高精度な分圧誤差評価の可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、広帯域抵抗分圧器の開発およびその分圧誤差を決定可能な評価システムの開発を進めた。抵抗分圧器に使用するチップ抵抗器全てのインピーダンスをLCRメータで高精度に計測し、直列抵抗部と並列抵抗部にそれぞれ使用するチップ抵抗の最適選定を拡張ハーモン理論に基づいて決定した。さらに、抵抗分圧器内の電界分布を均一化させ、チップーケース間の浮遊容量分布を簡素化するための電界シールド形状をシミュレーション解析で決定した。これらにより、高精度な広帯域抵抗分圧器の開発が実現できた。 一方、抵抗分圧器のための誤差評価システムの開発では、以前開発した評価システムをベースにした。以前のシステムでは、抵抗分圧器への入力信号とその出力信号を参照する参照信号の2信号を2台の高精度信号発生器を位相同期制御させて使用していたが、MHz領域では位相制御が不安定となり、誤差評価の正確性が大きく劣化する問題があった。そこで、MHz帯まで使用可能な位相標準器と呼ばれる、位相特性に優れた2チャンネル信号発生器を導入し、この位相不安定問題を解決した。また、抵抗分圧器の出力信号と参照信号との差分信号の同相成分と直角相成分を計測するロックインアンプはMHz帯までの仕様ではなかったため、周波数エクスパンダを使用したが、今回は2 MHzまで使用可能なデジタルロックインアンプで評価システムを構築した。今回の評価システムでは、上記2点の改良に加え、システム全体の誤差を補正するための誤差補正方法についても新たな方法として考案し、導入を試みた。 さらに、抵抗分圧器の後段に使用するバッファアンプの開発も行い、MHz帯でも入出力特性および位相特性に優れた性能を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は以下の通りである。 ①開発した分圧誤差評価システムの妥当性確認を行う。kHz帯からMHz帯にかけて、評価システムから取得される計測データの妥当性を確認するために、既に校正された誘導分圧器を参照器として評価システムに導入することで、そこで得られる誘導分圧器の比誤差および位相誤差と、校正データにおける比誤差および位相誤差を比較する。この比較で大きなギャップがある場合には、その問題について取り組む予定である。 ②開発した抵抗分圧器を分圧誤差評価システムで評価し、その比誤差および位相誤差を取得する。抵抗分圧器の場合、誘導分圧器とは異なり、その比較的大きな出力インピーダンスの影響でシステム内のロックインアンプの入力インピーダンスとの間に無視できない分圧効果が発生し、評価システムにおける大きな誤差原因となる。このため、抵抗分圧器の出力インピーダンスを高精度に決定するため、評価システムで得られた計測データに基づき、抵抗分圧器の誤差シミュレーションを行い、抵抗分圧器の等価回路を決定するための技術が構築する。 ③抵抗分圧器とバッファアンプとの周波数特性改善回路を開発する。抵抗分圧器の出力インピーダンスとバッファアンプの入力インピーダンスの影響で比誤差および位相誤差が周波数に応じて大きく変動することが予想される。その対策として、抵抗分圧器とバッファアンプの間にRC並列回路を設置することはよくやられる方法であるが、この回路を広帯域で実現可能なRC並列回路を開発するには、市販の可変抵抗器や可変コンデンサではなく、広帯域で実現可能な抵抗素子、コンデンサ素子、スイッチの選定が重要である。また、事前にバッファアンプの入力インピーダンスを正確に計測し、抵抗分圧器の等価回路から、最適なRC回路の可変抵抗範囲および可変キャパシタンス範囲を把握しておく必要がある。
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