2022 Fiscal Year Research-status Report
レーザーを用いたポリマーがいしの非接触・非破壊劣化診断技術の開発
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22K04064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 隆 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (60371283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 祐嗣 一般財団法人電力中央研究所, グリッドイノベーション研究本部, 上席研究員 (10371296)
本間 宏也 一般財団法人電力中央研究所, グリッドイノベーション研究本部, 上席研究員 (40371562)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レーザー / プラズマ / 分光 / ポリマー / がいし / 劣化診断 / 遠隔計測 / 電力設備 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)を用いたがいしの非接触・非破壊劣化診断技術の開発に関して、以下の結果を得た。 (1)可搬型LIBS装置の開発:実機環境下における現場劣化診断への適用を目的として、可搬型LIBS計測装置を開発した。レーザー照射系と受光系が一体となっており、拡大集光光学系でビーム径を拡大した後、受光系と同軸にレーザー光が照射される。これにより、計測位置が変わってもレーザーと受光系の光軸は一致しているため、安定な計測が可能である。 (2)実環境下での現場適用性評価:経年21年の長幹シリコーンゴムがいしを測定試料に用い、実機環境を模擬するため、交流電圧38 kVを印加して計測を行った。また降雨を想定して試料の計測箇所に純水を吹き付けた湿潤状態で計測した。全ての計測条件においてSi(390.55 nm)とAl(396.15 nm)の輝線が観測され、Alに対するSiの発光強度比は、無課電乾燥状態のがいしとほぼ同程度の値を示した。以上のことから、Alに対するSiの発光強度比を指標とした劣化診断が課電時や降雨時においても有効であることが示された。 (3)がいし付着塩分計測への適用:がいしの汚染は絶縁性能に影響を与える可能性があるため、汚染状態を定量的に測定することは重要である。がいしの塩分濃度(SDD)の測定に適用するためのLIBSの性能を評価した。測定試料として、人工汚損させた磁器がいしを模した試料を用いた。検量線の主元素としてNa(819.48 nm)、Cl(837.59 nm)の発光線を用い、測定条件の変化を補正するために、K(766.49 nm)、Ca(854.21 nm)、O(777.19 nm)を内部標準とした。Ca、 Kに対する Na、 Clの発光強度比を用いることにより、レーザーエネルギーの違いによる SDD 依存性の違いを補償することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023-2024年度の研究計画である「可搬型装置の開発と現場計測における実証」を前倒しで実施し、当初の計画通り、レーザー装置と受光望遠鏡が一体となった可搬型の遠隔LIBS計測装置を開発すると共に、課電状態や湿潤状態のがいしの成分比を遠隔で計測することにより、LIBSを用いた計測が現場での計測に有望であることを示した。また、がいしの劣化の主要因の一つであるがいしの汚損の計測に、本技術の適用可能性を示した。上記のように、2023-2024年度の研究計画を前倒しで実施すると共に、LIBSのがいし汚損計測への適用という、従来計画になかった成果も得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
可搬型LIBS装置をさらに改良し、現場計測を行うことにより、本技術の現場計測への適用可能性を評価する。また、CF-LIBSやPLS回帰の本技術への適用可能性を評価する。
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Causes of Carryover |
2022年度においては、当初使用を予定していた物品費の内、可搬型LIBS装置の開発に使用する光学素子、ホルダー等は、既存のものを使用することにより研究が進捗した。2023年度においては、当該年度に請求した助成金と合わせ、2023年度に実施する、CF-LIBSやPLS回帰を用いたLIBS計測技術の開発に必要な、光学素子やホルダー等を購入する。
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Research Products
(5 results)