2022 Fiscal Year Research-status Report
電子回路の誤動作防止のための近傍界ノイズ抑制素子の応用技術の開発
Project/Area Number |
22K04076
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村野 公俊 東海大学, 工学部, 教授 (60366078)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 近傍界ノイズ抑制素子 / ノイズ抑制効果 / 最適配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な電磁環境下で動作する電気・電子機器の誤動作の原因として,外来電磁妨害波によって機器内部の電子回路上に誘導される不要な電流の存在が挙げられる.本研究では,電子回路上の不要な電流を抑制するために回路近傍に装荷される「近傍界ノイズ抑制素子」について検討している. 近傍界ノイズ抑制素子のノイズ抑制効果については,これまで実験的に明らかにされつつあり,実用化に向けての検討がすすめられている.近年,電気・電子機器はその小型化により,機器を構成するプリント回路基板上に電子回路が高密度に実装されているが,近傍界ノイズ抑制素子はある程度の物理的な寸法を有することから,その寸法が同抑制素子を回路近傍に実装する際の妨げとなり,実用化を難しくする原因となっている.このような問題を解決するため,今年度は,回路近傍に近傍界ノイズ抑制素子を立体的に配置した場合のノイズ抑制効果と,同抑制素子の最適な配置位置の関係について,理論的な検討を行った. プリント回路基板上に配置された伝送線路(マイクロストリップ線路)に対して,近傍界ノイズ抑制素子を立体的に装荷した場合のモデルを多線条線路構造と考え,多線条線路理論を用いて同モデルを解析した結果,特定の周波数の信号(不要な信号)の伝搬を抑制するような特性(ノイズ抑制効果)をもたせることができることを確認した.また,立体的に配置する際の配置方法・配置位置によってノイズ抑制効果が変化し,最適な配置位置が存在することを明らかにした. これらの研究成果については,2022年度に開催されたシンポジウムを通じて公表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近傍界ノイズ抑制素子を実用化するにあたり,他の周辺回路の配置の妨げにならないよう,同抑制素子を回路に装荷することが求められる.2022年度は,その方策として,近傍界ノイズ抑制素子を回路近傍に立体的に配置した場合についての検討を行った. 立体的な構造を有する回路を解析するにあたり,当初の研究計画では,より高いノイズ抑制効果を得るための近傍界ノイズ抑制素子の最適な配置位置の推定を効率よく行うため,高周波回路設計用シミュレータの導入を予定していたが,社会情勢の変化(急激な円安による価格高騰の影響等)により,2022年度中の同シミュレータの導入が困難となった.そこで2022年度は,多線条線路理論を利用して,近傍界ノイズ抑制素子の最適な配置位置を理論的に推定する手法を適用することにした. マイクロストリップ線路が配置されたプリント回路基板に対して,近傍界ノイズ抑制素子を立体的に配置したモデルを,平行3本線路構造と考え,同抑制素子の位置に対するマイクロストリップ線路の伝送特性を変化を理論的に解析した結果,実験結果に近い傾向となることがわかった.これにより,近傍界ノイズ抑制素子を立体的に配置した場合のノイズ抑制効果を推定することが可能となったため,現在のところ,本研究がおおむね順調に進展していると判断している. なお,高周波回路設計用シミュレータについては2023年度以降の導入を検討しており,導入され次第,同シミュレータを用いることにより,近傍界ノイズ抑制素子の最適な配置位置・配置方法に関するより精度の高い推定を行う予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は,さまざまな回路が高密度に実装された実際のプリント回路基板に対して,近傍界ノイズ抑制素子を実装することを目指し,回路に対して同抑制素子を立体的に配置する手法についての検討を行った.多線条線路理論を用いて,近傍界ノイズ抑制素子が立体的に装荷されたマイクロストリップ線路の伝送特性の理論解析を行った結果,同抑制素子を立体的に配置する際の最適な配置方法とノイズ抑制効果を見積もることが可能となった.2023年度は,高周波回路設計用シミュレータを用いてより詳細に解析することにより,近傍界ノイズ抑制素子の配置位置・配置方法のさらなる最適化を図る予定である. また,これと並行して,複数かつ広帯域な周波数成分を有するノイズ信号の伝搬を抑制することのできる新たな近傍界ノイズ抑制素子の検討,開発を進める予定である.ディジタル化された電気・電子機器内部には,様々な周波数成分を有する広帯域な電磁界が存在すると考えられる.この電磁界は,さまざまな周波数成分を含む不要な電流を誘導する原因となり,機器の誤動作を誘発する一因となる.複雑な誘導電流に起因する機器の誤動作を抑えるためには,複数あるいは広帯域な周波数成分を有するノイズの抑制が必要となるため,これに対応した近傍界ノイズ抑制素子の検討,開発をすすめる予定である.ノイズ抑制効果の推定には高周波回路設計用シミュレータを活用する予定であり,理論と実験の両面から,検討・開発を進める予定である.
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画では,2022年度に高周波回路設計シミュレータを導入する予定であったが,社会情勢の変化(円安による急激な価格高騰の影響等)により導入できなかったため,次年度使用額が生じた.今後,社会情勢の動向を注視しながら,2023年度以降の導入を予定している.
|