2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K04103
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久門 尚史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80301240)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 無反射終端 / エネルギー収穫 / 時変システム / コンバータ |
Outline of Annual Research Achievements |
無損失の伝送線路に対して、整合終端は抵抗性になるため、時不変線形素子を用いて無反射を実現しようとすると、伝送されたエネルギーは熱に代わる。このような問題に対して、時変の自由度を用いることにより、無反射かつエネルギー収穫の実現を試みた。まず、単純に1個のスイッチとキャパシタのみの回路を用いて定められた電圧のパルスに対して無反射かつエネルギー収穫が実現できることを回路シミュレーションや実験を用いて検証した。この場合は終端は短絡に近似できるため、簡単な枠組みで確認できる。この確認の後、より一般に時変の自由度を活かす装置としてPWM(Pulse Width Modulation)を用いた双方向コンバータの利用を検討した。 双方向コンバータを用いて時変の自由度を利用する場合は、終端にインダクタとキャパシタによるインピーダンスが存在するため、反射波は入射波とは異なる波形になる。また、その反射波を正負反転させた等しい波形を出力するためには、LCフィルタを適切に考慮したPWM入力が必要になる。このような問題に対して、ラプラス変換を用いて、適切なPWM参照電圧を導出する手法を構築した。その結果、パルス波形にたいして、フィルタに対応する微分可能性が必要になることが明らかになった。また、Raised cos波が、この特性を満たすことを利用して、参照電圧として与える波形を解析的に導出した。 実際に実験を行う前に、GaNのMOSFETのモデルを利用して回路シミュレータを用いて、適切な回路パラメータを得た。また、ネットワークアナライザを用いてそのフィルタとしての特性や損失の評価を行い、実際に用いるパーツについての妥当性を検証した。この基盤をSMAコネクタを用いてGaN MOSFETのハーフブリッジ評価基板に接続することにより、実験装置を構築し,無反射かつエネルギー収穫が行われることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、時変の自由度を用いることによる原理検証という意味で、一定電圧のパルス波を用いて、無反射かつエネルギー収穫の可能性を実証できた。実際にこの検証を行うためには伝送線路の周波数特性のネットワークアナライザによる計測や、パルス波の過渡特性も考慮してエネルギー収支を評価する必要がある。これらの検証を経て、より一般の波形に対してPWMを用いた時変性を検討する基盤ができたと言える。 また、GaNのMOSFETの動作についても、立ち上がりや立下りの時間、ゲートドライバの特性に基づくデューティ比の範囲についての検討から、適切に動作させることができる周波数を考慮しながらデバイスの選定を行った。結果として10MHzで安定して動作させることができた。 さらに、理論検討においては過渡特性を厳密に考慮する方法を導出することにより、終端のインピーダンスを考慮したうえでPWMを生成することが可能になった。この方法は、より一般の波形に対しても適用可能な設計手法を提供している。 実際にエネルギー収穫かつ無反射終端を確認できたことは時変性を利用する新しい手法として、説得力のある手法が提案できたことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
エネルギー収支の詳細な検討があげられる。MOSFETのどのような特性に基づくエネルギー消費が支配的になるのかを考慮しながら、適切なPWM波形を構成していくことが重要になる。また、現在はゲートドライバには別電源からエネルギーを供給しているが、得られたエネルギーをりようすることにより、ゲートドライバーを駆動できるようにする。このためには、電源部分に関する消費電力の検討も必要になる。
現在はハーフブリッジを利用しているため、正のパルスのみを対象にしているが、これをフルブリッジに拡張することにより、正弦波のような負の値ももつ波に対して無反射かつエネルギー収穫を実現する方法を検討する。さらに、MOSFETの動作周波数を上げることも検討し、より高い周波数において、エネルギー収穫を行うことを検討する。また、エネルギーを蓄えるキャパシタの電圧がエネルギー収支に基づき変動した場合の対応についても検討を進める。
理論的なアプローチでは、2ポートの写像としての特性を検討することにより、時変の自由度を用いてより一般の特性を設計する手法についても検討する。特に、フィードバックや、安定性に関する議論も進める。
|
Research Products
(1 results)