2022 Fiscal Year Research-status Report
ローカル5Gと無線LANを共用するエリアオーナ主導型周波数資源管理システム
Project/Area Number |
22K04104
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
宮本 伸一 和歌山大学, システム工学部, 教授 (50252614)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 2.4GHz帯 / アンライセンスバンド / 自営系無線ネットワーク / 周波数共用 / 周波数管理 / 無線LAN / ローカル5G / 人工雑音 |
Outline of Annual Research Achievements |
企業や自治体が自ら構築する自営系無線ネットワークとして、ローカル5Gのように無線局免許が必要なシステムと無線LANのように無線局免許を要しないシステムの併用が検討されている。しかし、これら各種自営系無線ネットワークシステムの単なる併用は、各々のシステムが持つ固有の課題を抜本的に解決し得るものではない。 本研究課題では、ローカル5Gのサブネットワークとなる無線LANにおいて、従来の無線LANでは成し得なかった通信品質保証伝送を可能とする 『エリアオーナ主導型周波数資源管理システム』 を提案する。提案システムは、分散基地局、IoTネットワーク、無線リソースコーディネータの3つによって構成され、これらを用いて、(1)分散配置された基地局による第三者無線LANの割り込み排除、(2)ローカル5Gを介した分散配置基地局の集中管理、(3)高周波利用設備の稼働状況と無線ネットワークの連携制御を行う。これにより、プライベート空間での周波数資源をエリアオーナ自らが集中管理することが可能となり、無線LANの通信品質保証確率が飛躍的に向上するものと期待される。 初年度である令和4年度は、プライベート空間に来訪した第三者無線LANからの割り込みを抑止する方法として、分散配置基地局から順番に媒体占有期間を通知するためのプロトコルを考案した。またそれと並行して、2.4GHz帯を利用する自営系無線ネットワーク(無線LAN、Bluetooth)と高周波利用設備(電子レンジなど)が共存できる伝送手法を提案し、その有効性を検証した。その結果、自律的に周波数資源を共用するアンライセンスバンドにおいても、他者が運用する無線ネットワークシステムの割り込みを受けることなく、安定した伝送性能を確保できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の『補助事業期間中の研究実施計画』欄にて、初年度実施課題として掲げた2つの研究課題、すなわち、(課題1-1)分散配置された基地局が順番に媒体占有期間を通知するためのディジーチェーンプロトコルの考案、(課題1-2)基地局の置局設計パラメータの理論解析および実験検証のすべてを実施できた。また、当初、無線LANと同じく2.4GHz帯を利用するBluetoothは本研究課題の検討対象外であったが、課題遂行過程にて、(課題1-1)で考案したディジーチェーンプロトコルは、無線LANとBluetoothが共存する環境にも適用できる手法であることが判明したため、Bluetoothが共存する環境を含めた検討を行うことができた。さらに、当初想定していた以上の件数の外部発表を行うこともできた。これらの事由により、本研究課題の目的の達成度は『おおむね順調に進展している』と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(令和4年度)の研究では、本研究課題の主たる要素技術である『プライベート空間に到来する第三者無線LANからの割り込みを抑止する方法』について検討した。次年度(令和5年度)では、『ローカル5Gを介した無線LANのアクセス制御の集中管理』について検討する。 本研究課題で提案するシステムでは、環境情報の収集および周波数割り当て結果の通知にローカル5Gの低遅延伝送を活用するため、ローカル5Gのフレーム送受信タイミングと無線LANのフレーム送受信タイミングを一体化したプロトコルを考案しなければならない。また、集約された環境情報からリソースコーディネータが周波数割当を決定するためのアルゴリズム開発も必要となる。そこで、次年度では、(課題2-1)ローカル5Gのフレーム送受信タイミング前後に無線LANの送信機会を獲得できる予約型連携プロトコルの開発、(課題2-2)集約された情報から各無線ネットワークに割り当てる周波数資源を決定するアルゴリズムの考案を実施する。次年度考案するプロトコルは標準規格仕様から外れるため、実機を用いた検討を行うことはできない。そこで、計算機シミュレーション用サーバとシミュレーションソフトウェアを新たに購入し、それらを用いて性能評価を行う予定である。また、電子情報通信学会研究会や総合大会に参加して成果報告を行うとともに、学会論文誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)交付申請書の提出時点では、今年度、高性能計算機と16台のシングルボードコンピュータを購入し模擬実験を実施する予定であったが、事前に保有していた機材を用いて簡易実験を行ったところ、相応の結果を得られることが判明した。そのため、今年度は上記機材(高性能計算機と16台のシングルボードコンピュータ)の購入を見送り、本研究課題の遂行に必要最小限の計算機と実験設備の購入に留めることとした。
(使用計画)本報告書『今後の推進方策』欄に記載したように、来年度(令和5年度)では、計算機シミュレーションにより考案手法の性能評価を実施する予定である。そのため、今年度未使用額および次年度助成額を併せて高性能計算機とサーバの購入を計画している。具体的には、(1)プロトコルおよびアルゴリズム開発用計算機、(2)計算機シミュレーション用サーバ、(3)プロトコルおよびアルゴリズム開発用ソフトウェア、(4)計算機およびサーバ関連消耗品(ネットワークおよび周辺機器接続、セキュリティ・システム管理ソフト、外部記憶装置)の購入を計画している。また、これまで概ね順調に研究成果を挙げられていることから、当初計画通りの資料収集旅費に加えて成果発表旅費への充当も計画している。
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