2022 Fiscal Year Research-status Report
平面光波回路を用いた複数のミリ波・テラヘルツ波の一括生成法の研究
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22K04109
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高橋 浩 上智大学, 理工学部, 教授 (40500468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 平面光波回路 / ミリ波 / テラヘルツ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では無線通信、イメージング及び有機物同定などで利用されている電波(マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波など)の元となる非常に周波数の高い正弦波電気信号(以後本報告書では高周波と呼ぶ)の新しい発生方法の確立を目指している。高周波の発生は従来からさまざまな手法があるが、次世代のモバイルネットワーク(6Gなど)では単に周波数が高いだけでなく、周波数の絶対値の誤差が少なく、複数のアンテナ間で位相同期が取れている必要がある、出力が高いなど、複数の要求事項を同時に満足するのは難しい。本研究では、櫛歯状のスペクトルを有するレーザー光(以下周波数コムと呼ぶ)を平面光波回路に通したのちに広帯域フォトダイオードで光電変換することで上記の高周波を得る方法を提案している。 初年度である2022年度では、平面光波回路の基本構成、理論的検討を行った。周波数コムから特定の周波数の光を選択するのにはアレイ導波路回折格子(arrayed-waveguide grating: AWG)を使用するが、本研究ではその周期的周波数特性を活用することとし、生成したい高周波の周波数とAWGの周期を一致させるアイディアを採用することとした。その機能実現を実現するためにAWGとそのほかの光回路素子からなる平面光波回路の基本仕様の決定のための理論的検討、および、平面光波回路の基本構成(レイアウト)設計などを実施した。 次に設計した平面光波回路に対してシミュレーションを行い特性の予測を行った。また、その際に得られる高周波の周波数誤差などに関してもデータを分析し、次年度に向けた知見を得た。また、2023年度の予定している評価のための準備として高周波実験系の仮構築等の実験準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では本年度において次の4点: 1)平面光波回路の伝達関数を数式で導出し計算機シミュレーションを実施、2)平面光波回路の基本設計、3)平面光波回路の作製と基本光学特性評価、4)高周波実験評価計の準備、を実施する予定であった。以下にこれらの進捗を記す。 1)については、平面光波回路の伝達関数を導出し、matlabを用いて計算機シミュレーションの基本部分を作成し平面光波回路の特性予測データを得た。その結果提案する平面光波回路が理論的に動作することが確認できたため、特許出願を行うこととし明細書の執筆を行った(2022年度末において未完成だったため出願は行っていない)。2)については、AWGの基本設計は問題なく完了したが、平面光波回路全体のレイアウト設計(規定の回路寸法内に収容するレイアウトデザイン)が想定より複雑であり時間を要してしまったため完成できなかった。3)については、2)の遅れのため残念ながら平面光波回路の作製に着手できなかった。4)に関しては、高周波測定系の準備を行い周波数が異なるが基本的な動作確認を行い、2023年度の評価に向けて基本部分に問題がないことを確認できた。 以上より、平面光波回路の作製が遅れているため「やや遅れている」と自己評価したため、2023年度に挽回する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の前半は平面光波回路レイアウト設計に集中し昨年度の遅れを取り戻すとともに、当初計画で予定されていた評価を迅速に進めるため予備実験的なことも実施し、平面光波回路の作製が完了次第ただちに評価できるよう実験計画を綿密に組む。 また、前年度のシミュレーション結果を整理するとともに、追加の計算も実施して理論検討データを万全に準備し、実験結果と合わせて翌年に成果発表できるようにする。また、特許明細書を完成させて出願を行い権利を確保する。その際に、本技術の適用先を6G以降のモバイルネットワークだけでなくさまざまな分野に広げられることを示すため、光通信・モバイル通信以外の分野における諸問題を調査し、本技術の適用先について幅広く検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究費の大半を占めていた平面光波回路の作製費用は、作製に着手できなかったため、支払いが生じなかった。また、平面光波回路の作製費用が昨今の物価上昇のため当初計画の価格を上回る可能性が出たため、そのほかの少額実験機器の購入を控え全額を翌年度の平面光波回路の作製費に充当することにした。これにより、本研究の中心であり必須の平面光波回路の作製・実現に全力を尽くすこととした。支出が遅れたが基本的な研究計画に変更はない。
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