2022 Fiscal Year Research-status Report
複数UCAを用いたOAM多重伝送におけるモード間干渉抑圧と容量拡大に関する研究
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22K04112
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
前原 文明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80329101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 周平 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (10907075)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | OAM / UCA / MIMO / アンテナ軸ずれ / モード間干渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,第6世代通信システム (6G) の高速・大容量化の鍵を握るOAM多重伝送において,特に,受信特性の安定化を実現できる複数UCAを採り上げ,アンテナ軸ずれに起因した受信特性劣化の克服と伝送容量の拡大を,OAMモード間の干渉範囲とUCA間の受信電力変動に着目して,効果的・効率的に達成することを目指したものである. 本年度は,アンテナ軸ずれ対策技術として,受信側における簡易モード間干渉抑圧技術の提案を行い.その有効性を評価した.具体的には,アンテナ軸に起因したモード間干渉が特に隣接モードから深刻となる点に着目し,干渉モード数を限定した簡易モード間干渉キャンセラを構成し,その有効性を,全ての干渉モード数を考慮した通常方式を比較対象にとって計算機シミュレーションにより検証した.特性評価の結果,提案方式により,通常方式と同等のシステム容量を達成しつつ,干渉除去に要する計算コストを通常方式の20%にまで削減できることがわかった. また,複数UCAを用いたOAM多重伝送の容量拡大技術として,受信UCA間の受信電力差に着目した逐次干渉除去 (SIC) に基づくMIMO-OAM方式を提案し,直接波のみの場合だけでなく,大地反射波が存在する現実的な電波伝搬環境を想定した有効性評価を行った.特性評価の結果,大地反射波がある場合においても,垂直・水平の偏波面にかかわらずSICによる容量拡大効果が得られることがわかった.一方,大地反射の影響によりモード間干渉及びストリーム間干渉が深刻となることから,受信等化による干渉対策が必須となることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,本研究課題の目的であるOAM多重伝送のアンテナ軸ずれと容量拡大の実現に向けて,必須となるモード間干渉抑圧技術とSICによるMIMO信号分離技術の両方について技術提案を行うとともに,それらの有効性を基本的な伝搬条件において確認できたことが最大の成果であり,引き続き,より現実的な伝搬路条件においても有効性を保持できる方式提案を進めていく予定である.また,随時,研究成果がまとまり次第,国内外の学会において発表を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,OAM多重伝送のアンテナ軸ずれ対策とMIMOによる容量拡大の課題について,各々技術提案を行い,それらの有効性を基本的な伝搬条件において検証できたことから,今後,アンテナ軸ずれや大地反射が同時に存在する等,より厳しい伝搬環境下における効果検証を進めるとともに,提案方式の有効性を保持するための下記技術提案を行う予定である. (1)アンテナ軸ずれへのさらなる耐性向上を目的とした送信ビームフォーミングの適用 アンテナ軸ずれ存在下において,提案する簡易モード間干渉抑圧法の有効性を確認できた一方で,軸ずれの影響が深刻になると,受信信号電力そのものが低下し,大幅に受信特性が劣化する問題を確認した.この対策として,受信側の簡易キャンセラだけでなく,送信側にビームフォーミングを適用し,送受全体でアンテナ軸ずれへの耐性を高める方式を提案し,その有効性を計算機シミュレーションにより評価する. (2)アンテナ軸ずれと大地反射を同時に克服する簡易モード間干渉抑圧法の提案 アンテナ軸ずれだけでなく大地反射もモード間干渉の要因となる点に鑑み,大地反射とモード間干渉との相互関係を使用するモードと搬送波周波数の観点から解明する.また,そこで得られた知見に基づき,アンテナ軸ずれと大地反射の両者が存在する現実的な条件下においても有効となるモード間干渉抑圧法を提案する.
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Causes of Carryover |
研究経費として想定していた特性取得のための計算機シミュレーションの構築については,これまで研究室内で構築してきた技術資産を効果的に工夫することにより実現できたことから,次年度使用額が生じている.また,プリンタトナーをはじめとする消耗品の切替えが年度内に生じなかったことにより,次年度使用額が生じている.次年度使用額については,主として,研究成果の随時,国内外に発信するための学会参加費や論文投稿料,また,計算機シミュレーションの高度化費用として充当する予定である.
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