2022 Fiscal Year Research-status Report
アンダーサンプリングと相関処理を利用した超高感度フルディジタルQCMの開発
Project/Area Number |
22K04144
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今池 健 日本大学, 理工学部, 准教授 (10548093)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 翔太 日本大学, 理工学部, 助手 (70875062)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | QCM / ディジタルダウンコンバージョン / 相関処理 / ADC / 瞬時周波数計測 / 水晶発振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
数ピコグラムから数ナノグラム程度の微小質量変化を水晶振動子の共振周波数変化として検出可能なQCM(Quartz Crystal Microbalances:水晶振動子微量秤)はバイオセンサとして生体の抗原抗体反応の計測や,においセンサへの応用など比較的分子量の大きい,または濃度の高いにおい成分の分析を対象として利用されている.このQCMをさらに高感度化し,数ppbまたは数pptといった極めて希薄な大気中の汚染物質測定や毒性ガス漏洩の早期検出といった用途に応用できれば,環境モニタリングコストの大幅な削減が期待できる. 令和4年度は平成30年度~令和3年度の科研費研究課題で提案した次世代QCMである全ディジタル位相検出型QCM(FDPD-QCM)の更なる高感度化について研究を実施した.FDPD-QCMの性能を制限しているADコンバータ(ADC)の性能を改善するために,複数チャネルのADコンバータを用いて発振信号を取り込み,その後の信号処理において相関処理を利用することでシステムのフロントエンド部のダイナミックレンジを改善する手法を提案した.サンプリング周波数が100 MHz ~ 250 MHz程度のADCの場合,その振幅分解能は16 bitではあるものの,有効ビット数(ENOB)は12 bit程度に性能が低下する.本手法では,ADCを複数個並列化することでその並列数の平方根に比例してENOBを0.5 bitずつ,すなわちダイナミックレンジを3 dBずつ改善することが可能である. 上記手法の有効性検証のため,サンプリング周波数:160 MHz,ENOB:12.1 bitのADCを用いて30 MHzのQCMツインセンサで実験を行った結果,チャネルあたりのADCを2倍の数にした場合,周波数雑音の振幅が約1/√2倍になることが確認され,雑音スペクトルも3 dB減少することが実証された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2つの手法によってFDPD-QCMの超高感度化を実現することが目的である.2つの課題とは「QCMの高周波化とアンダーサンプリングの組み合わせ」および,「ADCの並列化と相関処理の組み合わせ」であり,そのうちの1つである後者が理論計算と実測においてよく一致し,得られた成果については既に国際学会IFCS-EFTF2023(Joint Conference of the IEEE International Frequency Control Symposium and the European Frequency and Time Forum)へ投稿し,アクセプトされているため予定通りの進捗状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策はもう一つの提案手法である「QCMの高周波化とアンダーサンプリング」を用いてFDPD-QCMの性能向上を検討することである.QCMセンサの質量検出感度は周波数の2乗に比例して増加するものの,発振周波数自体の安定度は低下する.また,アンダーサンプリングによって折り返し雑音が増加するため,発振周波数とADCのサンプリング周波数の間には最適値が存在しうる.さらに,発振回路の作製技術もQCMの性能に大きな影響を与えることから,種々条件について検証する.
|
Causes of Carryover |
当初研究成果を国内学会で発表する予定であったが国際学会への投稿へ切り替えたため,学会への投稿は年度内であるが実施は翌年度となり旅費を使用しなかった.また,FPGAを用いた設計開発において,一部の機能をFPGAではなくPC上で実行することで有償となる開発ソフトウェアおよびIPコア(高機能回路プログラム)を使用しなかったため次年度使用額が生じた.これらは既にアクセプトされている国際学会への参加料および開発ソフトウェア代金として次年度に使用する.
|