2023 Fiscal Year Research-status Report
サンプル値系の性能評価の統合的研究:誘導・準ハンケルノルム解析と非負性・双対性
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22K04153
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩原 朋道 京都大学, 工学研究科, 教授 (70189463)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サンプル値系 / 準ハンケル作用素 / 外部非負性 / 双対性 |
Outline of Annual Research Achievements |
外乱から制御出力までの入出力特性に関する性能評価は,ロバスト制御との密接な関係からも実用上極めて重要である.ディジタル機器を利用したフィードバック制御系であるサンプル値系においては,この入出力特性が周期時変となることに伴い,性能解析上のさまざまな難点や学術的興味が生まれる.とくに,申請者が世界に先駆けて提唱した準ハンケル作用素の視点は,さまざまな新たな性能指標の導入を示唆するが,それらの厳密な解析や相互関係の明確化など,未解決問題が数多く残っている. 本研究課題に関する2年目の成果は,これらの課題のうち,L1空間からL2空間への写像と見たサンプル値系の誘導ノルム,準ハンケルノルムと,過去と未来の境目のとり方についての自由度に関する後者の上限値であるハンケルノルムの解析手法を確立したこと,ならびに,サンプル値系の性質を解析する上で有用となる概念であるサンプル値系の非負性,中でも内部非負性に関する議論を,すでに得ていた基本的成果の上に立ちさらに整備したことであると言える. 前者に関しては,ラフな意味でのその双対的な問題と考えられるL_infinity/L2 誘導ノルム,準ハンケルノルムならびにハンケルノルムの解析の場合との関係性についても論じる他,criticalな境目と呼ぶ概念の定義がL_infinity/L2準ハンケルノルムの解析の場合と比べてより注意深く定義されるべきであることなども明らかにしている.さらには,双方の問題と密接に関連した問題であるサンプル値系のH2ノルムについて,L2/L1準ハンケルノルムなどの観点から新たな定義の導入を検討することなども含めて,踏み込んだ議論を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要でも述べた通り,2年目の成果の一部として,L1空間からL2空間への写像と見たサンプル値系の誘導ノルム,準ハンケルノルムと,過去と未来の境目のとり方についての自由度に関する後者の上限値であるハンケルノルムの解析手法を確立したことがある.このようなL2/L1という視点では,ハンケルノルムは誘導ノルムと一致することが明らかになっており,これらのノルム(誘導ノルム,ハンケルノルム)を最小化する制御器の設計を行う問題は,この事実により,取り扱いが比較的容易なものとなっている.双対的な問題であるL_infinity/L2誘導ノルム,ハンケルノルムについても同様の性質を通してそれらを最小化する制御器の設計をすでに論じており,その議論を参考にして,L2/L1誘導ノルム,ハンケルノルムの場合にも制御器設計を行う方法が基本的には構築できている.この点のみならず,criticalな境目が存在するか,存在するならばどこに存在するか,という問題を,過去と未来の境目をすべてすべて尽して準ハンケルノルムを求めた上で解決しようとする方法よりも,はるかに効率よく解くことができうる枠組みについても検討が進んでおり,そういった意味からも,進捗状況について順調であるといって問題ないものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況においても触れた通り,L2/L1誘導ノルム,ハンケルノルムの場合にも制御器設計を行う方法が基本的には構築できているが,その議論をできるだけ見通しよく再構築するなどの議論の整備も進めたいと考えている.また,同じく,criticalな境目が存在するか,存在するならばどこに存在するか,という問題についても,一見すると必須であるように当然思える,過去と未来の境目という概念を一切直接導入することのない形で議論できており,このことに関連して,それに付随して導かれている数多くの性質の関係を整理するなどして,やはり見通しのよい議論に整備することができないか,検討を行いたい.その他,同様の問題を連続時間周期時変系を対象として扱って,同様の成果がどのような範囲で得られるのかも明らかにしたいと考えている.
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Causes of Carryover |
コロナの状況に鑑みて複数の学会において参加をオンラインに切り替えたため,1年度目において旅費が想定したほどかからなかったことや,論文の掲載費についても想定を下回るなどの事情があった.そのため2年度目の繰越額が生じていたが,昨今の海外渡航および宿泊費の高騰の結果,2年度目の海外渡航においては相当な費用がかさむ結果となった.3年度目においても海外渡航を予定しているが,そのためにも翌年度使用額を残しておく形とすることは柔軟性を高める上で妥当な方策と考えた.残りの3年度目の研究期間で計画的に使用の予定である.
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Research Products
(8 results)