2023 Fiscal Year Research-status Report
確率論的アプローチによる集団構造を考慮した感染症解析と抑制戦略への応用
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22K04168
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石川 昌明 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (30201916)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 確率感染症モデル / ワクチン接種年齢 / 安定性解析 / 確率分岐 / リヤプノフ指数 / 定常確率密度関数 / 確率リアプノフ定理 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症モデルの構築においてワクチン接種年齢や感染齢(感染してからの期間)などの集団構造や回復率,感染率に含まれる不規則な揺らぎを考慮することにより,現実に即した感染症モデルの構築が可能となる.このような観点から感染症抑制戦略確立のため,まず,ワクチン接種年齢を考慮した確率感染症モデルを構成し,平衡解の確率分岐解析を行い,感染症流行抑制に必要なワクチン接種条件を導き,回復率に含まれる揺らぎの安定性への効果を考察した.具体的な成果は以下のとおりである. (1) 正規性白色雑音を用いた確率感染症モデルの確立:環境や個人差に起因して感染率や回復率などには不規則な揺らぎが存在していると考えられる.そこで、本研究では感染症モデルの構築において特に回復率の不規則な揺らぎの正規性白色雑音によるモデル化法を明らかにした. (2) ワクチン接種年齢を考慮した感染症モデルの構築:ワクチン効果は時間経過と共に減衰するため、ワクチン接種者人口群にワクチン接種した年齢を考慮し,より現実的な感染症モデルを構築した. (3) 確率分岐解析:感染症モデルの安定性は感染症の流行と密接な関係があるため,Disease-free平衡解(DFS)と呼ばれる感染者がいない平衡解と感染者が常在するエンデミック平衡解(ES)の安定性を考察し,DFSが自乗モーメント指数安定や確率安定になるための十分条件を導いた.P-分岐と呼ばれる定常確率密度関数の形状変化に基づく安定解析手法を用いて,不規則外乱やワクチン接種率のESの安定性への影響を考察した. (4)シミュレーション解析:(3)において導いた安定条件を満たす場合にDFS, ESが安定になることをシミュレーションにより検証し,安定条件の有効性を確認した.さらに,回復率の揺らぎが感染症流行に対して抑制作用を有することも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の2点より研究の進捗状況を判断した. (1)シミュレーションにおける数値計算の難点(特に定常確率密度関数の計算)を克服するのに想定以上の時間を要した. (2)感染症モデルの二つの平衡解(Disease-free平衡解,エンデミック平衡解)の安定性解析において確率分岐(D-分岐およびP-分岐)の適用に想定以上の時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の課題について研究を推進していく計画である. (1) ホスト人口における年齢構造の導入:感受者,感染者,ワクチン接種者,回復者の年齢分布を考慮した感染症モデルを構築する. (2) 感染症モデルの汎用性の考察:回復率以外にも感染率などに含まれる揺らぎを考慮した感染者モデルを構築する. (3) 分岐解析:平衡解の安定性の考察において前進分岐,後退分岐を考察し,感染症流行抑制に必要なワクチン接種率の予測を行う.
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Causes of Carryover |
大規模数値計算が必要となったため,従来より高機能の数値計算用PC(パソコン)を次年度購入する予定.
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