2022 Fiscal Year Research-status Report
ユーザのシステム同定法選択のためのデータに基づく統計学的評価法の開発
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22K04173
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥 宏史 大阪工業大学, 工学部, 教授 (20351455)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | システム同定 / 閉ループ系 / 不安定系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ユーザが同定問題に直面したときに適切なシステム同定法を選択する助けとなる定量的な評価法でシステム同定実験のデータから求められる評価法を構築することである.具体的に,二つの閉ループ部分空間同定法のPBSID 法とCL-MOESP 法のそれぞれについて推定量と誤差分散,信頼領域をシステム同定データから求め,それらを利用した統計学的仮説検定を設計する. CL-MOESP法では、入出力データ行列のQR分解より得られた三角行列を用いて同定対象の状態空間モデルを推定する.詳細には,三角行列のうち,同定対象への直接的な入出力の外部励振信号が張る部分空間上への射影に対応する部分行列が重要な役割をもつ.研究代表者の先行研究では,同定対象を含む閉ループ系を構成するフィードバック安定化制御器が一般の線形時不変系の場合について,それらの部分行列を信号由来成分と雑音由来成分に分解して前者の漸近的一致性および後者の漸近収束性を示した。 令和4年度は上述の結果を利用して,同定対象を含む閉ループ系を構成するフィードバック安定化制御器が一般の線形時不変系の場合について,CL-MOESP法の誤差分散解析を実施した.具体的には,部分行列のうちの雑音由来成分のベクトル化を行った上でその誤差共分散行列を解析的に導いた.また,信号由来成分の漸近的一致性および雑音由来成分の漸近収束性について数値シミュレーションを実施し,数値実験の結果から信号由来成分の真値への漸近的一致性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度までに,同定対象を含む閉ループ系のフィードバック安定化制御器が一般の線形時不変系のときのCL-MOESP法の誤差分散解析について一定の成果を得た.得られた研究成果をまとめた論文を国際会議IFAC 2023 World Congressに投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,1) CL-MOESP法の誤差分散解析について,数値シミュレーションを実施して得られた理論的成果の検証を行う.つぎに,2) PBSID 法やSSARX 法などほかの閉ループ部分空間同定法について十分な文献調査を行い,それらの推定量の漸近的一致性および誤差共分散行列について評価するための数値シミュレーションを実施するためのソフトウェアを開発する.つぎに,3) それぞれのシステム同定法の推定量と誤差共分散行列から信頼領域を導出する.CL-MOESP 法は一致推定量を与えることから,CL-MOESP 法の推定量と誤差分散から得られる信頼領域には真値が含まれると考える.PBSID 法の推定量との距離や信頼領域の包含関係を考慮した仮説検定を設計する.
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Causes of Carryover |
令和4年度は概ね予定通りの額の予算執行を行った。メーカーのモデル変更に伴う機種再選定を行った際に予算額との若干の価格差が出たため次年度使用額が生じた。ソフトウェアのライセンス保守費用の値上げがあったので、次年度使用額はその値上げ分の費用負担に充当する。
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