2023 Fiscal Year Research-status Report
制御仕様を定式化したら解けたと見なせる数値的制御系設計の枠組みと設計手法の開発
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22K04175
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
上 泰 広島工業大学, 工学部, 教授 (20413809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 祥康 神奈川大学, 理学部, 准教授 (00614041)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有限個周波数応答モデル / エネルギー関数 / 数値最適化 / 安定化 / 低感度化 / 混合感度問題 / 外点法型アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,目標とする制御性能が決まった際,その内容を周波数領域において数学的に表現すれば必要な制御器が導出できるような枠組みの構築を狙っている.2023年度は,前年度の研究では考慮していなかった安定化条件を対象にすることとしたため,安定化制御器の設計問題を主な研究対象とした.また,実際の研究対象となる本枠組みの構築を達成するための設計手段としては,前年度に引き続き,周波数応答データ(有限個周波数応答モデル)に基づく制御系設計手法を用いた. 2023年度に提案した設計手法の特徴・関連研究との違いは以下のとおりである.従前,周波数応答データに基づく制御系設計における安定条件としては,ナイキストの安定判別手法に基づき,「複素平面上の点(-1,0)を通る正の傾きをもった直線よりも,一巡伝達関数のベクトル軌跡が全て下側に存在すること」が用いられていた.「直線」を利用してきた理由は,設計問題を数値的に扱いやすくするため(凸最適化問題に帰着できるようにするため)であり,直線に限る必要はそもそもない.そこで,本研究では,この条件を緩和することを狙い,点(-1,0)におけるポテンシャルよりもベクトル軌跡上のポテンシャルが小さければナイキストの安定条件が満足されるようなポテンシャル関数(エネルギー関数と呼称)を複素平面上に定義し,これを用いた安定化制御器の設計法を提案した.なお,ポテンシャル関数を定義したことで,制御器の更新方向を解析的にも数値的にも導出できるようになっている.そして,本関数を用いて安定化制御器の設計問題,安定条件付きの低感度化問題,安定条件付きの混合感度問題が解けることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギー関数という考え方を導入して安定化制御器の設計ができている点,および,低感度化問題や混合感度問題などの典型的な制御系設計上の問題の解が与えられている点から,おおむね順調に研究が進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
扱う対象を,むだ時間を有するシステムや不確かさを持つシステムに広げたり,制御目的を,正実性の確保や入力飽和に対するアンチワインドアップの達成などに広げていく.加えて,得られた成果をまとめて学会等で発表していく.
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Causes of Carryover |
物品費については,今年度に計算機環境の整備を進めたため,多少の相違はあるが概ね想定通りに執行できている.旅費については,今年度の執行状況については,概ね,当初の予定通りになっているが,前年度の旅費執行額が少なかったため,この2年間で見ると執行額が予定よりも少なくなっている.この点が次年度使用額が生じている主な要因である.昨今の物価高や円安の影響などにより,当初よりも経費が必要になる場合が考えられるため,次年度使用額は,当初予算と実際に必要となる経費の差分の補填に利用するなど,効率よく研究を進めるために使用していく.
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