2022 Fiscal Year Research-status Report
ポリイミド基板上に集積した多数TFTの自己整合的な特性ばらつき均一化技術の確立
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22K04194
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 哲也 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (00359556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諏訪 智之 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (70431541)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薄膜トランジスタ / MONOS型トランジスタ / しきい値電圧制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フレキシブル対応ポリイミド基板上に、電荷注入によりしきい値電圧Vthの制御が可能な金属/酸化膜/窒化膜(電荷捕獲膜)/酸化膜/半導体(MONOS)型ポリシリコン薄膜トランジスタ(TFT)を実現することであり、さらに、そのMONOS型TFTを多数集積して同時に電荷注入を行い、電荷注入時のトンネル酸化膜中の電界緩和現象を利用し、現在問題となっているVthバラつきを自己収束させ均一化する技術の確立を目指すものである。 今年度は、MONOS型ポリシリコンTFTを製作するプロセスフローを構築し、まず固相結晶化により形成したポリシリコンをチャネル層とするMONOS型TFT(N型)の製作を行った。製作したTFTのゲートに正バイアスを印加し、トンネリングにより電子をチャネル層から電荷捕獲層へ注入し、注入時間によりVthを制御できることを明らかとした。しかし、TFTのトランスファー特性においてサブスレショルド特性の劣化(S値の増大)が認められ、電子注入によるトンネル酸化膜/ポリシリコン界面特性の劣化が示唆された。比較のために結晶シリコンのMONOSキャパシタも作製し、電荷注入によるフラットバント電圧(トランジスタのVthに対応)のシフトを評価したところ、界面特性を劣化させることなく、フラットバンド電圧が制御できることが確認できた。これらの結果より、トンネル酸化膜とシリコンとの界面において、ポリシリコンの場合は結晶シリコンの場合に比べて欠陥が多く、電荷注入ストレスに弱いことが分かった。今後、TFTのトランスファー特性を劣化させずにVthを制御するには界面特性の向上が重要であることが示唆された。これらの結果は、多数TFTのVth均一化を目指す本テーマのみならず、電荷蓄積層を用いた不揮発性メモリ等の高性能化を目指す上でも有用な知見であると考えらる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿い概ね順調に進捗している。今年度はMONOS型ポリシリコンTFTを製作するプロセスフローを構築し、固相結晶化により形成したポリシリコンをチャネル層とするMONOS型TFTの製作することができた。特に、MONOS構造のキーとなる酸化膜/窒化膜/酸化膜の積層構造をマイクロ波励起の低ダメージプラズマCVD(化学気相成長)により大気に晒さずに一貫して成膜出来る環境を構築し、コンタミネーションを極力排除した成膜プロセスを導入することができた。製作したMONOS型TFTにおいて、電子のトンネル注入によりVthが正にシフトすることを確認し、また、注入時間に応じてそのシフト量を制御できることも確認できた。ただし、電子注入によりTFTのトランスファー特性においてサブスレショルドスウィング(S値)の劣化(増大)が認められ、トンネル酸化膜/ポリシリコン界面特性の劣化することが明らかとなった。今後は界面特性の向上させるプロセス開発が重要であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は固相結晶化により形成したポリシリコンのMONOS型TFTを用いてVth制御の評価を行ったが、固相結晶化では結晶化アニールの温度が650℃であり、ディスプレイで用いられるガラス基板やフレキシブル対応ポリイミド基板では使用できない。今後、これら基板にも適用可能なレーザーアニールで結晶化したポリシリコンをTFTのチャネル層として導入する。 トンネル酸化膜とポリシリコンの界面特性を向上させるため、トンネル酸化膜形成の際に、マイクロ波励起高密度プラズマを用いたラジカル酸化を導入し、その効果を検証する。これまでの研究結果で、ラジカル酸化ではシリコンの結晶面方位に依らず欠陥の少ない酸化膜/シリコン界面が実現できることを明らかとしている。様々な面方位の結晶粒を有するポリシリコンへラジカル酸化技術を適用することで低欠陥のトンネル酸化膜/シリコン界面の実現を目指す。 電荷蓄積層のシリコン窒化膜のプラズマCVD成膜についても、電荷蓄積層に適した成膜条件を探求する。主に膜中のシリコン/窒素比に着目する。 またVthを負側にシフトさせるためのホール注入プロセスに関しても、ホットホール注入もしくはトンネル注入を試み、その制御性・信頼性を評価する。
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