2022 Fiscal Year Research-status Report
太陽電池の性能を最大限に引き出すCZTS系混晶薄膜の作製
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22K04209
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
百瀬 成空 長野工業高等専門学校, 情報エレクトロニクス系, 准教授 (00413774)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薄膜太陽電池 / 化合物半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,「Cu2ZnSnS4(CZTS)薄膜にSeとGeの両方を添加し,CZTS系薄膜太陽電池の出力性能を最大限に伸ばす手法とメカニズムを明らかにする」ことを最終目的に研究を遂行している。Cu-Zn-Sn-Ge膜を封管内にて硫化・セレン化する方法でCZTS膜へGeとSeを添加しようと試みていたが,加熱反応中にGeの大部分が再蒸発してしまっていた。これを解決するために,令和4年度はまず現有のスパッタ装置へ小型スパッタ源を増設し,Cu-Zn-Sn-Ge膜の上に極薄層をキャップする実験を実施した。材料選定の結果,40nmのZn極薄層を堆積した場合にGeの再蒸発をある程度防ぎながらCZTS系結晶を成長させることができ,SeとGeの両方を添加したCZTS膜を,その添加量を自在に変えながら作製することが可能となった。Se/(S+Se)が0.94,Ge/(Sn+Ge)が0.25としたCZTS薄膜は禁制帯幅が1.20eVとなり,これを光吸収層とした薄膜太陽電池からは35mA/cm2の電流密度と0.4V超の電圧を得ることができた。これは従来作製していたSeのみを添加したCZTSよりもバンド幅が拡がり理論上出力電流が不利になるにも関わらず,出力電流が勝っている。ただし曲線因子FFが33%程度と振るわず,膜ならびにpn接合部の品質改善が課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究計画のとおりにおおむね実験は進んでいる。国際会議での発表申し込みは受理されたが,さらに原著論文として成果を発信できれば申し分ないと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Znキャップの有無ならびに堆積厚,SeとGeの添加比をパラメータに膜物性の変化を体系的にまとめ学術論文として投稿する。また,Cu-Zn-Snの各組成の過不足がSe-Ge添加CZTS膜へおよぼす影響も体系的に調査し,主に太陽電池の曲線因子の改善に努める。以上をクリアしてからは,Geの添加量に厚さ方向の分布を加える作製を試行し,膜底部,膜表面のpn接合付近のバンド幅をアレンジするバンドエンジニアリングに挑戦する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予算どおりの執行と考えるが,硫黄,セレンなどの反応用試薬に残がありこれらを使い切るまでに購入するのは品質管理上好ましくないと判断し購入を先送りにした。令和5年度ではこれら試薬が終わり次第執行する予定である。
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