2023 Fiscal Year Research-status Report
30keV励起光電子分光法の開発と半導体デバイスのバンドアライメント評価への適用
Project/Area Number |
22K04210
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
安野 聡 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 産業利用・産学連携推進室, 主幹研究員 (00767113)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 硬X線光電子分光 / 高エネルギーX線 / バンドアライメント評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高エネルギー光電子の制御技術と放射光による高エネルギーX線(~30 keV)を組み合わせた数百nmの分析深さを有する新しい光電子分光法を開発し、実際の半導体デバイス構造の電子状態を非破壊で評価する事によって真に求めたいバンド構造を得る事を目的とするものである。 2023年度は、前年度に開発した20 kVの高電圧印加に対応可能なサンプルステージと2段階制御方式の光電子の運動エネルギー制御技術により、本研究の目標である励起X線エネルギー30 keVでの実証実験を行った。イオン化断面積の低下に起因し参照試料のAuのフェルミエッジやAu4fピークの測定は困難であったが、イオン化断面積の比較的大きなAu3dピークや後述するSi1s等のスペクトルの取得に成功した。またSiO2(110nm)/Si基板試料について、励起X線エネルギー14~30 keVによるSi1sピークの測定を実施したところ、励起X線エネルギーが高くなる (分析深さが大きくなる) ほどピーク強度が増大する傾向が認められた。26 keV励起以上ではSi基板由来のシグナルから肩構造の特徴が認められ、Si基板中におけるポテンシャル分布(バンドベンディング等)の存在を示唆する結果が得られた。 一方で、励起X線エネルギーの増加に伴ったエネルギー分解の低下やRecoil effectによるピークシフト、ピークブロードニングが認められており、同技術の実用化のためには今後こうした課題の検討を進める必要がある事も分かってきた。 次年度はさらに放射光の特徴であるX線エネルギーを自在に変更できることを活かしたConstant final state測定(各測定対象元素ピークの運動エネルギーを揃える)による深さ方向分析の検討も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度にサンプルステージの開発と20keV励起の実証実験を予定よりも早く進められていたことから、30keV励起の実証実験を2023年度前半に進めることができた。その結果、Constant final stateの予備実験や、エネルギー校正方法の検討やRecoil effectの確認など新たなに見つかった課題についても検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は励起エネルギーを各測定対象元素ピークの運動エネルギーを揃えるように調整したConstant final state測定の実証実験を進め、エネルギー依存性による深さ方向分析技術を構築する。その他、実用化に向けた課題として抽出された、エネルギー校正方法やRecoil effectについての検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ当初の計画通りに予算を執行したが、当初予定していた打ち合わせ等が実施できなかったため予算に余りが生じた。翌年度では外部発表や打ち合わせ等で使用する予定である。
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